第3話 介護職員はなぜ、低賃金でも辞めない?
前項において、介護職員の賃金がカットされる理由を述べたが、単純に言えば、ブラック企業特有の意識が特養の経営には蔓延していると言えるわけだ。当然ながら、労働環境は悪化する一方である。
1.慢性的な労働力不足
2.不衛生
3.事故・事件
以上が介護における問題点と言えるだろう。1については常に特養では慢性的な労働不足に陥っている施設が多い。低賃金ゆえに職員が集まらないからだ。しかも、最低限の人員規定さえクリアしていれば、経営側はそれを改善させるつもりはない。むしろ、人員規定を割らないようにあの手この手で辞めない従業員を作り出す。それが経営だと思っている。
労働力不足のしわ寄せは夜間勤務に如実に出る。通常、人が足りている状況なら、夜勤をする回数は2週間に一度程度となる。しかし、それが満たされない現場では1週間に2度、夜勤を強いられるところもある。特に昼間の従業員にパートの割合などが多いと、夜勤が出来る従業員が少ないなどという事もある。
2については、コストカットの加減で、消毒液が足りないや、ゴム手袋は複数の利用者に対して使い回しをする。または使用しない。ポータブルトイレを複数の利用者で利用させるなどである。これらの行為は感染症の蔓延へと繋がり、それは介護者にまで影響を与える事にもなる。更にはこのような不衛生な行為自体が従業員の定着率の低下へと繋がるのである。
3は以上の2項目によって、引き起こされる事である。不衛生によって、感染症が蔓延したり、そのようなモラル欠如が、サービスの質を大きく低下させ、それが事故や虐待へと繋がる事になる。近年、介護施設における高齢者虐待が増加傾向を見せているが、それは介護者や家族の意識が高まり、露見する事が多くなっただけであり、遥か昔からあれぐらいの数は存在していると思うし、ある意味では氷山の一角だと考えている。
このような労働環境においても辞めない従業員の意識には幾つか要因がある。
一つは辞めても次の就職に不安がある。または介護業界以外への就職に抵抗がある場合だ。新卒者などにはこの手の問題が大きいと思われる。さらには中高年でリストラなどで、介護業界に入った者も同様だろう。このような人々はそれなりに責任感もあるので、高いサービスの質を提供してくれる可能性はあるが、結果として労働者には苦境となるだろう。
逆にこの労働環境でも何とも思わない者も多く存在する。彼等の労働意欲は低く、責任感も無い。そもそも、自分の職務の内容もしっかりと理解していない事が多い。これは有資格者、無資格者問わずに存在する。このような者は仕事への使命感も低く、事故などを誘発する可能性を抱える。更には様々な虐待へと発展する種を抱えていると想定される。だが、経営者からすると、いかなる動労環境においても辞めない彼等は大切な従業員であり、辞めていく従業員には罵声を浴びせ、サービスの質を悪化させる彼等はそれなりに優遇する事がある。これが老人ホームにおける危険性の一員である。
特別養護老人ホームの闇 @kaigo
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