おまけ
「今、彼と何話してたの」
「次の撮影で使う小道具の相談ですよ」
遠くのステージで撮影の準備をしているカメラマンのアシスタントさんを彼がじっと睨み付けている。
「あいつ、ぜったい君に気がある」
「まさか」
くすくすと笑いながら私は不機嫌そうな彼にメイクをする。
「今回は真っ赤なルージュでいきましょう」
色が白い彼には濃い色がとても映える。真っ赤なルージュを唇へと塗り終えると、思った通りすごく艶やかに仕上がった。
「少し色が強すぎるかな…」
口紅を抑えるためのティッシュを取りに道具を広げている机へと振り向くと
「ねえ、ここ直して」
彼が呼び止めた。
「どこですか?」
ティッシュより先に彼の様子を見るために顔を近づけるとそのまま顎をつかまれて唇に噛みつかれた。
「なっ何するんですかっ」
真っ赤な彼の唇から艶が少し消えている。
「どうして?昨日の夜は夢中で答えてくれたのに」
じっと私を見つめる彼はやはりどこか不機嫌そうで、
「ここは職場ですよ!」
私の怒った顔に彼が、ぷっと吹きだして笑い出した。
「それ虫よけだから、落としちゃダメだよ」
彼の言葉に慌てて鏡を見ると私の唇に彼の真っ赤なルージュが重なっていた。
あわあわと慌てる私に「撮影入ります」のスタジオの声が届く。
「わぁっ待ってこれだけ直させて」
私は彼の唇にもう一度、真っ赤なルージュを塗りなおした。
綺麗な花には訳がある 篠宮 ゆたか @mikuromikuro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます