少々キツイ事を書きますがご容赦ください。
スーパーカブの小熊に代わり、今度は男のコミュ障が好きにフェラーリを乗り回します。
彼と同居する事になった親無しの三姉妹、ちょっとキャッツアイ入ってます?と、異世界ハーレムものならぬリアルハーレムものと言ったチートさで、男性読者の欲望を満たしていきます。
所謂ハーレムものって、大抵途中で露骨なギャグを入れてオチを付ける。
しかし本作の場合、主人公がそれこそキリコ系のハードボイルドなのです。
そして男女の描写が妙に生々しく感じられ、これで本番描写が有ったら官能小説になってしまう様に感じました。
通常のハーレムものはラブコメなのですか、それからコメディの要素を抜いてしまうと…。
ラブ、恋愛小説になるのでしょうが、女性作家がソフトに仕上げるのでは無く、男性作家が写実的に描くとこの様になるのかも知れません。
ある意味ではラノベより純文学の恋愛描写に近いとも言えますが、純文学たり得るにはもう一つ何か欲しいところです。
トネ先生、これをやるならラノベと割り切らずに更なる高みを目指していただきたい。
それからフェラーリやRC30の描写はマニアックで楽しいですが、バイク初心者の舞ちゃんいくら何でも天才過ぎです。
俺は馬鹿として車に関わってまだ浅いので、そこまで沢山の馬鹿に会ったわけでは無いが、それでも今まであった人達は大まかな種類に分類できた。
走って楽しむ馬鹿・いじって楽しむ馬鹿・見て楽しむ馬鹿だ。
もちろん全て楽しむ馬鹿が多いが、それでもこのどれか1つ突出すると思う。
どれにしたって金は湯水の如く消え、世間の目はそう優しくないが、この馬鹿達は好きで馬鹿をやっている。
なんの問題もない。
しかし今日ふっと目に留まり開いた小説で新たな馬鹿に会った。
フェラーリ馬鹿だ。
この馬鹿は上記のどこにも属さぬ、初めて会う馬鹿だと思った。
コイツは確かに走って楽しみ、いじって楽しみ、見て楽しみはするが、それだけだ。
この馬鹿はきっと好きで馬鹿をやっているのでは無く、馬鹿にならないと生きて行けなかったから馬鹿になったんだ。
大概の馬鹿は人生の中に車を織り交ぜるが、この馬鹿はフェラーリの為に人生を織り成した様にすら見える。
そのせいか物語の最終回も、コイツならきっとこれが1番の正解なんだろうと思える終わらせ方をしてくれる。
淡白で掴み所ない、人としての危うさすら感じる主人公だが、沢山の人に愛され、支えられ、馬鹿のままでフェラーリ以外の大切な物に触れられたのは、きっと彼の跳ね馬のような真っ直ぐと前を向いた力強さ故なんだろう。
馬鹿は馬鹿のままでいい。
心からそう思わせてくれる作品だった。
これからの世の中馬鹿はもっと生きづらくなる。
馬鹿が馬鹿でいるためには、並大抵の馬鹿では駄目だ。
でも俺は少なくとも、この作品を読んで馬鹿を続けようと思った。
素敵な物語をありがとうございました。