キャラクターステータス4



○久能紫苑シオン(10歳)

 魔力性質:無形

 ステータス:魔力総量B 魔力出力B 魔力制御B 魔力耐性C 精神強度D 身体能力E 魔力感応B 



 十歳時点での神童。

 能力値は年齢を考えると際立って高い。これはアヤネと出会ってから二年間で体に無理をさせて遂げた成長である。日常的に魔力を枯渇させるような生活をしていたわけだが、仮に大人が彼らの修練を見た場合、血相を変えて止めるくらいには危ないことを日常的に行っていた。


 アヤネは思考速度が格段に早いのに対して、シオンは集中力こそ高いものの、知能そのものは特出するほどのものではない。

 それでもアヤネの活動に追いつくために、シオンは普段から魔力を使って脳の活動を活性化させる訓練を行っていた。

 これは魔法の家系に生まれた子供ならば誰でも習う技能だが、肉体的にも精神的にも負荷が大きいため、やりすぎると精神が擦り切れる。それをシオンは際限なく行っていたため、脳への負担が重く神経過敏な状態となっていた。

 常に外的刺激に対して過敏に反応してしまう状態だが、彼はそれを良いことに、他者への精神感応の術式を作って活用していた。はっきり言ってしまえば、すでに正常な精神状態ではない。


 また、脳の負荷による後遺症として、深い睡眠を取れなくなってしまっている。彼がショートスリーパーなのは、単純に肉体が長時間の休息を取れるだけの体力を持っていないからでもある。この一年半後にシオンは事故にあって再起不能となるが、それがなかったとしても、遠からず身体を壊していたと考えられる。


 この話でのシオンは誇張抜きで全盛期で、身体を酷使した代償がまだ表に出ていないため、飛んだり跳ねたりと大暴れしている。思考力だけは五年後の本編時空のほうが上だが、仮にこの時代のシオンと十五歳のシオンを戦わせた場合、勝負にならないくらいには十歳の頃は強かった。最も、アヤネはもっとやばいのだが……

 元々この話は、神童時代のシオンとアヤネを書きたくて考えた話だったので、全力の彼らを書けて楽しかった。



 主な魔法

・『精神感応』

 単純なテレパス。神経過敏となっているシオンの精神は、微細な情報にも感応できるようになっている。その受け取る情報を細分化し、他者の思考にのみチャンネルを合わせるように調整したのがこの魔法式である。

 ほぼ常時発動型で、最小の魔力で使い続けられる。細かい思考までは読み取れないが、相手が嘘をついているのか本音を口にしているのかと言った感情の動きを感知できるため、主に対人関係での交渉に向いた魔法である。

 複雑な魔法式なので、五年後は使用不可。



・『虚像破壊イコノクラスム

 対象の影を掴み、その形を変化させることで、実像に影響を与える魔法。

 簡単に言えば、影の腕を折るとその影の持ち主の腕も折れる。

 依代の形を変えることで本体を攻撃する呪詛であり、単純であるがゆえに強力な魔法。ファントムに対しては、ダメージを与えられなかったとしても足止めは出来るくらいの術式なので、シオンにとっては格上に対しての切り札の一つでもある。


・『灼熱の土地の番人ムスペルヘイム・ムスペル

 精神のみを焼く幻想の炎。

 北欧神話のムスペルヘイムをイメージした魔法。別に本当に神話を再現しているわけではないが、それに近づけるための概念的理由付けをいくつかしている。

 シオンは北欧神話の思想が好きなので、こういった神話由来の魔法を作るのを好んでいる。(本編において、扶桑国の龍神を制御するためにユグドラシルを持ち出したのもこの辺の影響)


・『鋳造・雷切丸』

 戦国時代の武将・立花道雪が所有していた日本刀。柄の部分に鳥の飾りがあったことから、当初は『千鳥』と呼ばれていた。

 立花道雪が35歳の頃、昼寝をしているところに急な夕立が襲ってきて、雷が落ちてきた。その時、彼は枕元においてあった千鳥を抜き合わせて雷を受け止めたとされる。その逸話から、雷を斬った刀、雷切と銘をつけられた。

 道雪はこの落雷によって半身不随になったとされるが、この後の時代において、戦に参加して敵将を討ちったという資料も存在するため、真偽は不明である。


 ちなみに、別に立花道雪が打った刀ではないため、この刀を立花道雪作と言った逢沢あきほのセリフは厳密には間違い。

 ただ、概念的に『雷神殺し』の力を得たのは道雪が雷を斬った逸話が理由なので、『雷切丸』を作ったのは道雪であるという考え方で口にしたものと考えられる。


 シオンはこれの現物を見に行き(不法侵入)、なおかつ鋳造技術をアヤネとともに勉強してから、この刀の模造品を生成した。概念強度を上げるために、子供あきほが使っていた『猫丸』を鋳造過程で借り受けて練り込んでいるため、概念的にもかなり強力な刀になっている。


 余談だが、立花道雪は絵を書く趣味があったようで、家臣に対して菅原道真の絵を描いて送った事があるそうな。




○久我綾音アヤネ(10)

 魔力性質:流形 固形

 ステータス:魔力総量A 魔力出力B 魔力制御C 魔力耐性A 精神強度E 身体能力E 魔力感応B


 十歳時点での神童。

 何だこの化物。


 テーマはみにくいアヒルの子。自分の居場所を探す、人間から生まれた化物。

 シオンが無理をして成長した神童であるのに対して、アヤネは元のスペックが桁違いなので、純粋に高い能力を誇っている。唯一、精神強度だけが年相応の数値になっているが、情緒があまり安定していないために不意の出来事に弱いだけで、別に霊子体を維持する能力が低いわけではない。


 第三部では折り合いをつけた彼女だが、この頃は最もイケイケだった頃で、シオンという理解者を得ているが故に一番手がつけられない時期だったりする。誰かを理解する気なんて無い。ただシオンに理解されればいい。そう割り切りながらも、誰か自分と張り合える人間は居ないのかと求め続けている。


 異常なほど高いスペックを持つアヤネは、周囲の人間に共感することが出来なかった。誰も理解することが出来ないし、誰もアヤネを理解してくれない。その辺りの心情は第三部でも描いたけれど、アヤネはシオン以外の他者を自分と同族であると思えなかった。

 「人間相手に殺されるなんて思ったのは初めて」と言ったのは、彼女の心の底からの叫びである。それは純粋な歓喜の叫びであり、あの瞬間だけは自分のことを人間だと思えたのである。


 神童時代の二人の話を書こうと思った時に、一番描きたかったのがアヤネのシオンに対する感情の重さである。アヤネがシオンのことを唯一の理解者であると感じているのは第三部でも描いたけれど、それが具体的にどんなものだったのかを見せたかった。

 アヤネは何でも一人で出来る少女なんだけれど、事あるごとにシオンを頼るし、シオンのことを気にする。あくまで自然とシオンを隣りにいて当然の存在と口にする辺りに、彼女の依存度を感じてもらいたかった。

 この番外編を読んだ後に第三部を見ると、草上ノキアに対しての嫉妬や、シオンに対する八つ当たりなんかが感じ方が変わって見えるんじゃないかなぁとも思う。



 主な魔法

・『天網恢恢てんもうかいかい竹箆返しっぺがえし』

 天網恢恢シリーズ。敵意に反応する呪詛返しの術式に、物理反射の魔法式をくっつけたもの。

 たとえ音速を超える対物ライフルの弾丸であっても、敵意さえ感知できれば反射することが出来る。ただし、呪詛返しの概念強度か、物理反射の制限を超えるものは失敗する。


・『千紫万紅・水龍の巣みなものつき

 千紫万紅シリーズの水バージョン。

 霧、風、砂の3パターンは比較的簡単に用意できるのだが、『水龍の巣』は大量の水が必要となるため、基本的に水辺でないと使えない。

 水を龍のように操作して叩きつけるのが基本的な動作だが、他の千紫万紅シリーズと同じように、他の現象を起こす足がかりにすることも可能。比良坂シドウ戦では、氷、雷、炎と言ったものを連続で発生させていた。

 ちなみに、他の千紫万紅シリーズに比べるとかなり魔力を食うので、五年後は使えない。




フォウ麗元レイウォン

 原始『■■■■■■』

 因子『法』『■■』『秩序』『風』『■■』『雷』『治癒』『■■』『■■』『戦争』

 因子10 ハイエストランク

 霊具『なし』

 ステータス

 筋力値A 耐久値C 敏捷値B 精神力A 魔法力B 顕在性B 神秘性B



 自ら風神を名乗るファントム。

 霊子融合体。

 トキノエ計画の研究者にして、自身の肉体を実験台とした被検体。


 トキノエ計画については、作中でうまく描写できなかったんだけれど、別にレイウォンとあきほが総責任者だったわけでなく、いくつかある部署のうちの一部署でしかない。そもそも双葉列島の研究所にしても、支部の一つでしかなかったのだけれど、レイウォンとあきほが思いの外結果を出してしまったために拠点として重要度が上がってしまったというのが実情。


 元々は疫病を霊子的に再現するというのがメインの研究で、世界各地に存在する疫病や毒の呪いを解析するという機関だった。

 ちなみにその研究の一つとして、平城京の九頭竜があったりする。『天然痘をばらまく鬼を喰らう九頭竜』という伝説が平城京跡に残っており、それを採集するために一時的に研究機関が置かれたものの、うまく行かずに頓挫した。その残滓が実を言うととあるファントムの誕生に関わっていたりするのだけれど、その辺りは語る機会があれば(九頭竜っていったらまあ彼女のことなのだが)


 レイウォン本人について。

 豪放磊落にして大胆不敵なおっさん。でかい図体に似合った豪快な男であるが、これでいて本職は研究者である。

 豪快な雰囲気はもとからだが、あきほと出会うまでは自身の天才性を鼻にかけて他者を見下すような人間であった。それが、あきほとともに研究をすすめることで次第に温和になり、今のような気前のいい男になった。とは言え性根自体はそうそう変わらないので、気がいいからといって人情味にあふれているわけではない。身内には甘いが敵や知らない人間に対して容赦はしない。別に善人ではないので、殺人への忌避感もない。殺すとなったら殺すだけである。

 おそらくアヤネのことを誰よりも理解してやれる人間。レイウォンにとっても、他の人間は生物学的に同類であるだけで、心から同族であるとは思えなかった。彼がそれでも社会に馴染めたのは、研究者という居場所が提供されたことと、あきほという執着を覚える女性に出会えたことだった。


 あえて本編中で明言はしなかったけれど、レイウォンとあきほは互いに好きあっている関係。ただし、あくまで研究者と被検体という立ち位置は崩さずに居たので、一線を越えることはなかった。研究後期で、あきほが情報圧汚染で衰弱していく様子を見ながら、レイウォンは神経をすり減らし続けた。

 被検体に感情移入するべきではない。他の被検体と同じように扱わなければと思いながらも、同じ研究者として交流する時間も存在する。その立ち位置のブレが彼に迷いを与えたが、結局あきほが暴走するまで、レイウォンは研究者としての立場を崩さなかった。その代わり、あきほが暴走してトキノエ計画が崩壊してからは本心に突き動かされて行動することになる。その結果については本編に描いたとおりである。


 ちなみに作者的には結構古いキャラクターで、元々は別の作品に使っていたキャラだった。もちろんこのシリーズに出すにあたって設定は大幅に変えられているんだけど、キャラとしてはお気に入りのキャラクター。

 ウィザードリィ・ゲームの第四部を書くとして、その前に紹介しておく必要のあるキャラの一人だったので、彼については第四部以降に紹介できたら良いなと思う。(そもそも書く時間を捻出しなければいけないのだが)



 パッシブスキル

 第四部以降公開


 アクティブスキル

 『哭き叫べ、金剛杵ルドラ・ヴァジュラ

 雷を操る金剛の武具。もとは仏教具であり、煩悩を砕く目的の法具。柄を中心に両端に槍の刃がついており、その刃の数によって名称が違う。レイウォンはこれを矢として放っていた。

 ルドラとはインドの暴風神であり、雷の神であるインドラ神の従者でもある。ルドラもインドラも『ヴァジュラを持つ者』という異名が有り、それぞれにヴァジュラを使った逸話が存在する。

 

 『風神の鏖殺兵器ヴァーヤヴィヤ・アストラ

 ヴァーユ・アストラ。

 風神ヴァーユの神格を付与した攻撃。作中ではメイスを風に包んでぶん投げた。

 レイウォンは自身に霊子融合を施す時に、カラミティ・ジェイルから雷の因子のサンプルを抽出した。

 それを制御するために、別の場所で風の霊子災害を討伐してこれを吸収した。結果、風神の因子が一番体に馴染んだため、風を扱うのが得意である。


 ちなみにレイウォンの原始は、とある兄弟に関係するものである。原始を元に派生したのではなく、複数の因子を組み合わせた結果、逸話とこじつけてかろうじて安定させたものなので、かなりちぐはぐな事になっている。


 『梵天の灰塵砲撃ブラフマー・アストラ

 インド神話の創造神ブラフマーの神格を付与した攻撃。ブラフマー神が作り出した宇宙のエネルギーを込めた飛翔体とされる。レイウォンは武器を持ってなかったので、魔力の塊としてぶつけた。要はか○はめ波である


 アストラとはインド神話において飛来武器として描かれるもので、様々な神に対応した力を帯びている。先に上げたヴァーヤヴィヤ・アストラは風神の力を込めたものだが、他にも火の力であるアグニ・アストラや、雷雨の力であるインドラ・アストラなど、付与された神の力によって性質は変わる。

 インドの叙事詩マハーバーラタでは、二つの勢力が戦場でそのアストラを投げ合う様子が描かれているが、その破壊力は絶大だった。その破壊の描写から、古代インドには核兵器が存在したのではないかとも言われてもいる。



○逢沢あきほ

 レイス『カラミティ・ジェイルの火雷天神』

 アウトフォーマー『観測機』


 トキノエ計画の被験者にして研究者。

 幼い頃に国栖蜘蛛によるテロで両親を失い、自身も命を落としかける。その時にとある魔法組織に拾われ、以後は貴人種の監視とともに生きることとなる。


 霊子戦争時代の話はそれほど語れることがないんだけれど、明確にその被害者であると言える女性。彼女自身も人体実験に参加していたのだけれど、それも結局は貴人種の命令に従ったようなものであり、あきほに自由意志というものは存在しなかった。そんな彼女が唯一自分の意志で選べたことが、レイウォンのために研究をすすめることであり、レイウォンに殺してもらうために子供の『あきほ』を残すことだったりする。


 アウトフォーマーについては、情報密度を持たない情報体という説明をしていたけれど、彼ら(便宜上こう呼ぶ)は現実界の何かを依代として干渉することしか出来ない。実数に対する虚数のようなもので、現実界によって定義づけられる情報生命体である。

 作中で貴人種と庸人種、というふうに分類はしたものの、アウトフォーマーそのものには明確な文化や種族と言った概念はない。あくまで現実界に影響を受けた現象であるため、それは相対的に現実界の人間同士の争いに帰結する。霊子戦争というのはいわば人間同士の抗争であり、過激になりすぎた人類の思想競争が具現化したようなものである。

 アウトフォーマーにはそれぞれ役割があり、あきほに憑いていたものは『観測機』としての役割を担っていた。想定敵である『国栖蜘蛛』が用意した『疱瘡』の因子を監視し、カウンターとして利用するための役割。そのために、あきほが暴走した後も憑依を続け、端末として子供の『あきほ』となって存在し続けた。


 あきほ個人について。

 人好きする快活な性格だが、それは他の情緒を知らないからであって、彼女自身が望んでそうあろうとしたわけではない。彼女は言ってしまえばスパイ教育を受けた人間なので、目的を果たすために必要な人格としてそうあるように洗脳され、実際にそれを受け入れた。

 洗脳とは言ったものの、あきほはつらい思いをしたわけではなく、ただ選択の自由がなかっただけ。自分が不自由だったのだと気づいたのはレイウォンと出会って彼に惹かれた後のことであり、それまではむしろ死なずに生きているだけで幸せくらいに思っていた。

 そんな彼女なので、価値観も一般的な人間とは少しだけズレている。具体的に言うと、事実よりも概念的な事由を優先する。雷切丸を立花道雪が作ったと言ったのがその一つだったり、レイウォンのことを最初に風神と呼んだりしている(後者については、子供『あきほ』状態での発言だが、それを理由にレイウォンは風神を名乗っている)


 逢沢あきほという女性は、死の間際にようやく自由を得た。

 惹かれた男に気持ちを伝える自由すらなかった女は、最後に愛する男の胸に抱かれて果てた。それは、あきほが自分に与えられた唯一の報酬でもあった。




キョウ緋槭ヒシュク

 原始『蚩尤しゆう

 因子『戦争』『武具』『反乱』『天候』『軍神』『濃霧』『炎』『牛』『悪霊』『異人』

 因子10 ハイエストランク

 霊具『饕餮面とうてつめん

 ステータス

 筋力値A 耐久値A 敏捷値B 精神力B 魔法力C 顕在性C 神秘性B



 世界魔導協定所属のセプタ・チュトラリー第三席『蚩尤』

 世界に七体登録されているハイエストランクの一体。


 本編では因子を最大で10個持っているファントムが存在する、とだけ描写したことがあったのだけれど、そのハイエストランクがついに登場である。

 本編が学園内の出来事であるのに対して、今回は番外編なのでハメを外してハイエストランクを三人も出したんだけれど、レイウォンやテオは少し例外で、緋槭が一番まっとうな存在。とにかく最強のファントムを出そうと思って作ったキャラなので、作中描写もハメを外しまくった。これまで最強として描いていた千頭和ナギニよりも数段強い。


 蚩尤というのは、古代中国において、為政者に対して反乱を起こした最初の人物。戦争に使う武器を発明した人間でも有り、また石や鉄を食べる怪物であるとも言われている。八十一人の兄弟と数多の魑魅魍魎を味方につけた一大軍団を率いて、当時の為政者である黄帝に反乱を起こしたのだが、琢鹿の戦いにおいて敗北した。


 その戦いっぷりから化物として描かれることが多く、獣の身体に銅の頭を持つとか、八脚で立つ魔神であるとか、四目六臂で人の体に牛の頭と鳥の踵を持っているとか、同じ顔した八十一人の兄弟がいるとか、もうそいつは一体どんな生物だよっていう姿ばかりが伝えられている。おそらく、それだけ恐れられていたということなのだろう。

 反乱の敗北者でもあるため、忌むべき魔神として語られる蚩尤であるが、武神や兵主神として崇められたりすることもあり、一概に悪い印象ばかりが残っているわけではない。


 緋槭個人に関しては、朴訥とした性格の神霊であり、自分を一個の武力として認識している。

 他のファントムと同じで人格そのものは蚩尤本人ではないが、伝承を色濃く引き出しているため、伝説のもととなった蚩尤にかなり近い精神性をしている。強すぎる力を持ちながらも理知的な部分もあり、敵に回すと手に負えない怪物である。



 パッシブスキル

 『戦争』……『常在戦場』

 戦争のパッシブ。常時、戦闘状態に自身を置く事ができる。

 どんなにリラックスしていても瞬時に戦闘に移ることが出来る。また、一度戦闘状態に入った場合、敵の姿を見失うことがない。この緋槭の捕捉から逃れるには、Aランク以上の魔法力が必要となる。


 『武具』……『兵主神』

 武具のパッシブ。蚩尤が開発したとされるあらゆる武具を再現する他、一度見た兵器を模倣することが可能。ただし、鉄製のもので動力を使わないものに限る。


 『反乱』……『九黎きゅうれいの兄弟』

 反乱のパッシブ。緋槭と魔力的なつながりを持つことで、他者に能力の一部を付与することが出来る。主に武器作成と身体能力の向上がある。


 九黎とは蚩尤に味方をした民族である。九黎は大きく分けて9つの民族の集合体で、さらに小さくわけると81の氏族があったとされる。一説には、蚩尤は九黎の一族の長であったとも考えられている。

 蚩尤には81人の同じ顔をした兄弟が居たという逸話があるが、これは九黎の一族のことを指しているとも取れる。


 『天候』……『天然・魑魅魍魎』

 天候のパッシブ。天候を操る能力。

 パッシブスキルとしては、天候の影響を受けない形で現れている。どんな嵐であっても吹雪であっても、緋槭は通常と同じパフォーマンスを発揮することが出来る。


 琢鹿の戦いにおいて、蚩尤は風伯や雨師をはじめとした様々な魑魅魍魎を率いたとされる。天候すらも味方につけた蚩尤の反乱に、黄帝は苦戦を強いられたという。



 『軍神』……『蚩尤旗』

 軍神のパッシブ。緋槭より精神力の低い場合、向き合った際に萎縮して動けなくなる。これは視線を外すたびに効果を持つ。


 蚩尤の討伐後、黄帝は己の威光を知ら示すために、蚩尤の姿を描いた赤い旗を掲げたという。また、三国志時代には劉邦が同じく蚩尤旗を軍旗として採用したという逸話がある。



 『濃霧』……『黄霧四塞こうむしそく

 濃霧のパッシブ。視認されない限り、緋槭の気配を相手に感じさせない。

 感知するにはAランク以上の魔法力か神秘性が必要。


 蚩尤は濃霧を操る能力があったとされる。緋槭は自在に霧を出すことが出来、それによって身を隠すことも出来る。(もっとも、彼は強いので身を隠す必要性が殆どない)


 『炎』………『果てぬ戦火』

 炎のパッシブ。ダメージを受けても能力値が下がらない。


 『牛』………『四目六臂しもくろくひの魔神』

 牛のパッシブ。腕を四本生やす。


 蚩尤は八本の足があったという逸話があるが、これは腕が六本で足が二本であると考えられる。どちらにしろ化物である。(あと目が四つあったとも言われている)


 『悪霊』……『楓の朱』

 悪霊のパッシブ。緋槭に傷をつけたものは、そのたびに精神力を下げる。


 蚩尤が処刑された時、その鮮血が手枷を赤く染めた。その手枷はやがて楓の木となり、蚩尤の怨念により葉を赤く染めるという逸話が存在する。また、蚩尤の首が埋められた場所に楓の林が出来たとされ、その赤赤とした様子は血楓林と呼ばれた。


 『異人』……『知性ある怪物』

 異人のパッシブ。対象の隠し事を見破った際、相手のステータスを全てワンランク下げる。




 アクティブスキル

 『風伯飛簾ふうはくひれん

 風を操る風伯の能力を借り受ける。空中を自在に動けるほか、風を操って強烈な一撃を叩き込むことも出来る。


 『雨師玄冥うしげんめい

 雨を操る雨師の能力を借り受ける。緋槭の場合は雨というよりも水を操る力として利用しており、水滴を弾丸のように飛ばすことが出来る。


 『兵主・武神具象』

 正確にはスキルではなく単純な技。パッシブスキル『兵主神』によって次々と武具を精製し、これを連続で投げつける。相手は死ぬ。


 『血楓林けっぷうりん屍山血河しざんけつが

 蚩尤が敗北した時の怨念を形にしたスキル。周囲を血に染まった濃霧で満たしそこから幾重にも刃を作り出して斬りつける。


 『悪食あくじき饕餮王とうてつおう

 中国神話に伝えられる饕餮と呼ばれる怪物を作り出す。牛や羊の体を持ち、虎の牙と人の爪を持つキメラの姿だが、その顔は蚩尤の頭であるとされる伝承がある。


 ファントムとしての緋槭の霊具『饕餮面』は、この饕餮を模した牛の仮面という設定。




○比良坂祠堂シドウ

 魔力性質:無形

 ステータス:魔力総量C 魔力出力B 魔力制御B 魔力耐性C 精神強度B 身体能力B 魔力感応C


 世界魔導協定所属。守衛戦艦『ひいらぎ』の司令官。

 若干24歳という若さで一つの部隊を任せられている時点で、疑いようのないエリートであるのだが、本人が自身のことを過小評価しているためか、イマイチパッとしない。年若い上司という立場で指揮を取っているのだが、そうしたうだつの上がらない彼の人柄のおかげか、戦艦の乗組員からはかなり信頼されているとか。


 キャラコンセプトとしては、粗雑だけれどマメな若者。口調は乱暴なんだけど結構気遣いの出来る男で、苦労人な感じのキャラクター。

 最初期のプロットには存在しなかったキャラで、敵対勢力に蚩尤を出すことを決めた時に、できればバディもほしいなと思って急遽作った。おかげでアヤネが大暴れする事になったわけであるが……。

 ちなみに、別シリーズの『ソーサラーシューターズ』を読んでる人なら分かったと思うけど、比良坂キサキの年の離れた兄にあたる人物。シューターズの方でキサキに兄がいることはほのめかしていたので、せっかくだからここで出そうと思ったのである。

 年の離れた妹とはほとんど交流がないままに別離しているため、気持ちとしては従兄弟とか姪っ子くらいの気持ちだったりする。ただ、キサキに対して悪感情を抱いているわけではないため、もし対面したとしてもぶっきらぼうに話をすることになるだろうと思われる。



 主な魔法

 『根之国ねのくに穢レ禊けがれみそぎ

 自身を襲う厄災を払う魔法。

 基本的には概念属性、主に呪いを祓うために使われるのだが、物理属性の魔法も受け流すことが出来る。ただしあまりに強力な魔法は防げないため、あくまで即死しない範囲の自動防御という形である。


 『比良坂ひらさか黄泉下よみくだり』

 生身を霊子生体化させるカニングフォーク。

 比良坂家秘伝の自然魔法で、生身の人間でありながら情報界と直接精神をつなげることが出来る。生身の肉体という枷を外し、魔力流路や魔力出力量を無視して魔法の行使が可能となる。その代わり、肉体と霊体のバランスを誤ると、生身に戻れなくなる危険性がある。

 シドウはこのカニングフォークを使い、緋槭の能力を最大限に引き出して使用した。仮に生身のままであれば、蚩尤の膂力は腕を一振りしただけでも身体が弾け飛ぶので、『九黎の兄弟』を使う時にはこのカニングフォークは必須となる。



○テオ

 原始『瘟鬼おんき趙公明ちょうこうめい)』

 因子『疫病』『災害』『鬼』『道教』『仙術』『鉄』『渡来神』『財神』『宝貝』『悪霊』

 因子10 ハイエストランク

 霊具『病原菌』

 ステータス

 筋力値C 耐久値C 敏捷値B 精神力B 魔法力A 顕在性B 神秘性B


 

 諸悪の根源。


 元々彼の出番はそれほどなく、あくまでカラミティ・ジェイルの原因となったファントムという立ち位置だった。

 そのため、初期プロットでは最後の最後に『疱瘡』の因子を盗みに来る正体不明の敵という感じだったんだけど、それだと短編としては消化不良だったので、神童二人を誘う役割になって序盤から登場することになった。ただその時点でも、実は後半の緋槭との戦闘は考えられていなかった。

 最初は緋槭とレイウォンが戦って、そのサポートをアヤネがするというプロットだったんだけど、レイウォンとあきほの関係を掘り下げたかったので、それなら緋槭とテオを戦わせよう、という考えで今の形になった。結果的には一番いい形に収まったように思う。


 この話を書くにあたって、疫病に関係する霊子災害というのを一つのテーマにするつもりだったので、それに関係する逸話を色々調べたんだけど、その中に菅原道真と趙公明の名前があった。特に趙公明に関しては封神演義の印象が強かったので、瘟神としての側面は面白い題材だったのでこれはぜひ使いたいなと思って今に至る。


 五瘟使者の一人にして、疫病神。

 天界に存在する瘟部には、五柱の瘟鬼が所属し、人々に流行病をもたらすとされている。趙公明はそのうち、秋の季節と西の方角を司る瘟鬼で、西方白瘟という別名を持つ。

 瘟鬼は疫病を流行らせる存在だが、瘟神として奉られる場合は、病を払う力も持っている。趙公明は瘟神としての性質を持つのだが、テオの場合は瘟鬼としての性質を強く持って顕現している。


 ちなみに趙公明が操る疫病は別に天然痘とは限らないのだが、過去の記録にある流行病は多くが疱瘡と同一視されるため、その効果が強く出ている。また、現代において趙公明の役割は封神演義の神仙の一人としての側面が強いため、疫病神としての神格が弱くなっている。それもあって、『撲滅された疫病』と『疫病神としての側面が弱まった神霊』という役割がかぶった結果、天然痘の能力として表に出ることとなった。

 


 現在彼は、『国栖蜘蛛』と呼ばれる組織に身を置いている。これは『ソーサラーシューターズ』の方でちらっと名前だけ出したんだけど、この世界観における宿敵のようなもので、これから少しずつ描いていけたらなと思っている。




パッシブスキル


 『疫病』……『瘟神』

 疫病のパッシブ。高熱を伴う疫病を撒き散らす。


 『災害』……『不明』


 『鬼』………『不明』


 『道教』……『無為自然』

 道教のパッシブ大地に呼応し、個人としての存在感を消す。Aランク相当の気配遮断。他者はテオの存在を感知できなくなる。


 『仙術』……『峨眉山がびさん羅浮洞らふどうの神仙』

 仙術のパッシブ。自然と一体化して再生することが出来る。


 仙人とは、修行の結果、自然と一体化し、自身の体内の陰と陽を完全調和した者のことを指す。不滅の真理を悟った存在であり、道教における『道』を再現することが出来る。

 中でも、神仙は法力と神通力を持った神々のことで、自然現象や歴史的事件などをもとにした化身でもある。趙公明が所属する五瘟使者もまた、疫病を司る神であるため、神仙としての神格を持つ。


 『鉄』………『不明』


 『渡来神』……『諸教混淆しょきょうこんこう

 渡来神のパッシブ破壊と豊穣の神。大黒天が複数の土地を渡り歩いて信仰を変えていった逸話から、魔力を消費することでステータスを上昇させる。


 『財神』……『玄壇真君げんだんしんくん

 財神のパッシブ。金策において困ることのない星回りに存在する。現実的に不可能でない限り、自然と金銭が集まってくる。


 『宝貝』………『封神演義の神仙』

 宝貝のパッシブ。『縛竜索』『定海珠』『金蛟剪』の三つの宝貝を所有する


 ・金蛟剪きんこうせん………あらゆるものを両断する大鋏。概念的なものであっても斬ることが出来るため、魔法やスキルと言ったものも破壊できる。

 ・縛竜索ばくりゅうさく………必ず対象を捕らえる縄。概念的なものでも縛ることが出来る。テオはこれを鉄の鎖に改良して使用している。

 ・定海珠ていかいじゅ………原初の混沌から拾い上げた万象を司る二十四個の宝珠。一つ一つが何にでもなれる可能性を秘めており、使用時の方向性に影響されて様々な効果を生む。

 

 『悪霊』……『幽鬼の将軍』

 悪霊のパッシブ。悪霊を遣わして人の生命力を奪う。ファントム相手には効果を発揮しない。






 以上、番外編『カラミティ・ジェイルの火雷天神』でした。


 この話、元々は前後編の3万字程度の話のつもりでプロットを作ったのだけれど、キャラや話が膨れ上がってなんだかんだで12万字の長編になってしまいました。次回以降の前フリにもなっているので仕方ないとは言え、まさかこんなことになるとは……。


 次を書くとしたら、第三部の続きでユースカップ編になると思います。書くとしたらかなり長い話になると思うので、いつになるかわかりませんが、更新を見かけたらちらりとでも見ていただけたら幸いです。



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ウィザードリィ・ゲーム 西織 @nisiori3

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