鋼の腸詰
布団にくるまった体にしんしんと冷気が差す。時計を見ると、明け方が近かった。
「お腹すいたね。何か作ろうか」
「いや、冷蔵庫に買い置きがある、それを食べよう。温めてくれるか」
◆◆が眠たげに言う。
「いいよ。任せて。ボイル?」
「そうだ」
「できたよ」
服を着てゆであがったビニールのパックを抱えて戻ってきた■■■が言う。
「ありがとう」
「さっき茹でながら思ったことがあるんだけどいってもいい?」
「いいけど、なんか改まって言われると怖い感じするな。ああ、悪い、遮ってしまったな。続けてくれ」
頷いて、■■■はビニールの口を開けて皿に開けた。
「肉詰めをアレだっていうやつがあるじゃない? でもぼくのはもう肉じゃない訳だ。それって、なんていうか、別の表現が必要だと思わない?」
「どうでもいいけど、たぶんきみの言ってるのは肉詰めじゃなくて腸詰だ」
「ん? ああ、うんそうだね。あれっ、じゃあ肉詰めってなんだ……?」
「型付きのハンバーグだよ。ピーマンの肉詰めってあるだろ。そうなると腸詰は腸の肉詰めってとこかな。そういう言い方はしないけど。……腸に詰めるほうをピックアップしてもいいかと思うけどどうなんだろう」
「それは、ええと……よくわからないな。そういえば腸詰っていうけど腸のどこなの? 知ってる?」
「小腸だよ。羊か豚か牛の、小腸の皮を使うんだ。ああ、あとは腸じゃなくて膀胱を使ったりもする。豚の膀胱とか有名だったりするかな」
■■■は少しそわそわとした。
「膀胱に何かを入れるっていうのは、なんか、変な感じがするよ」
「生きてる間はそういうことないからな。スープ、せっかく開けてもらったことだし冷める前に食べよう。すごい湯気だ」
サプリメントはほどほどに。 佳原雪 @setsu_yosihara
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