姫始め
「姫始めをしよう」
テレビを見ていた◆◆が言った。■■■はみかんをもそもそと口に運ぶ。
「いいよ。それで、何をするんだ? 何か用意が要るようなら買ってくるけど」
「ん…… ああ、いや、えっ? 姫始めってなんだか知ってる?」
「えっ、わからないけどなんかお正月特有のやつだよね? あれっ、もしかしてなんか変なこと言った?」
◆◆は少し驚いたような顔をした。
「変なことを言ったのは僕の方だな。そうだな、ざっくり言うとお正月セックスのことを世間では姫始めとよびます」
「それは、知らなかったな。それで、それってどのタイミングでするものなの?」
「任意!」
「任意……」
「日付が変わってからって話ではあるけど、聞き及ぶ限り細かいしきたりとかはないはずだ」
「もう日付変わってるよ」
二人は時計をじっと見た。秒針がカチコチと回る。
「ええと、明けましておめでとう」
「おめでとう。今年もよろしく。来年も。再来年もできたらよろしく」
「頼んでくるね。こちらこそ」
■■■はテーブルの上に投げ出されていた手を見て、自分の手を差し出した。
「よ、よろしく」
ジェットブラックの手が差し出された手を握る。年明けの静かな空気の中、二人は握手をした。
「記者会見みたいだね」
「年明け早々の会見は大変そうだな」
「違いないね」
「笑ってたらこんな時間だ。歯を磨いて布団の用意をしようか」
「あ、寝る? どうする?」
「どっちにしても歯は磨くから、そのあとに決めよう」
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