節句

年の瀬

「寒い!」

玄関に■■■が飛び込んできた。◆◆は湯気の膜の裏から声をかけた。

「やあ、どうしたんだい年の瀬のこんな時間に」

「仕事が終わったから来たんだよ。めちゃくちゃ寒いよ、雪降ってきたよ」

「そば食べる? ちょうど今茹でてるとこだけど」

「食べる!」


二人は向かい合わせでそばを啜った。

「なんで大根?」

「そばにおろしと刻みネギを入れるのが習わしなんだ。その上に魚介のてんぷらを載せる。そういう食べ物なんだ」

「馴染みのない食べ方だ。なんていうか具が多いんだね」

「具が多いんじゃなくてそばが少ないんだ。比率が狂ってしまったな」

「そうかな。年越しそばって言ったらこんなもんだと思うけど……あっ晩御飯もう食べた? 大福買って来たから一緒に食べよう」

「何大福?」

「いちご」

「食べよう」


「甘い」

「あまいね」

「このいちごのごろっと丸ごとひとつ入ってるところが好きだな」

「良いよね。ちょっと酸っぱいのも良いバランスだよね」

ピンク色の餅が伸びる。二人はもちもちといちごの入った大福を食べた。カチカチ時計の秒針が鳴る。

「そういえば■■■は帰省しないのか」

「してたらここにはいないよね」

「間違いない」

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