5作目 『名探偵・桜野美海子の最期/凛野 冥』


「ミステリーばっか読んでるみたいだけど、よく飽きないね」

 ある日博士が唐突にそう聞いてきた。


「何言ってんだ? むしろミステリーほど読むのが楽しい小説はないと思うんだが」

「へえ、その心は」

「だって探偵ってかっこいいじゃん」

「単純明快すぎない?」


 博士は半分あきれたような顔で相槌を打つ。そういえば博士はSFを書いてるんだっけ。実際どんなのかくらいは聞いてもいいか。

「ならSFの良さはどういった所だよ」

「そりゃあ、未来を想像して想像するとこさ! とはいえ……」

 そこで博士の顔が暗くなる。


「ん? どした、浮かない顔して」

「いや、ボクの中では史上最高の大作を書いてるんだけど、評価されてるのが凄まじくて……」

「あーわかるわかる。セミプロみたいな人もいるよな~」

「うん、まぁそれもあるけど、一度ランキングみてごらんよ。今なら月間ランキングまで見れるし」


 博士の話が気になったオレは、興味本位でSFを巡り、3文字の小説や『お〇んぽ』とか何語か分からないキャッチコピーとかを見て、「成る程、これが未来の小説か……」と嘆息した。

 やっぱりミステリーが一番だな!!



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感想:『名探偵・桜野美海子の最期/凛野 冥』



「これは、アリか? いやでもこれも未来のミステリーかもな……」

 読み終わり、読み返し、も一度ラストをじっくり読み、ひと言呟いた。


 ストーリー自体はシンプルだ。

 5名の名探偵がある推理小説家の別荘に招待され、謎に巻き込まれていく。クローズドサークルのミステリーとしては、王道と言ってもいい。

 だが、この小説のスタイルが、ある作家が執筆した小説をともに読んでいくという進み方をすることに、すでに罠が仕掛けられている。

 ラストの二転三転する結末は、ジェットコースターというよりは万華鏡をくるくると回されたような、変わり具合だ。


 正直、人を選ぶ作品だと思う。好きな人は絶対に好きになる。ただ、少しでも納得がいかない部分があると、それが最後にしこりの様に残るのだ。

 この作品に名探偵は出てくるけれど、推理は常に正しいとは限らない。

 そして、『推理』という言葉自体、本当は正しいという意味ではないのだと、この作品は問いかけてるように思えた。


「というかこの作品が予選に落ちるのか……。争うレベルが高すぎるというか、評価が低すぎる気もするけどな」

 せめて、今後も評価はされてほしいと思い★3つ付けた。





「しまった。この人レビュー0じゃん」

「しょうがない、次の作品を探すために、ちょっと乱馬に聞いてみようかな」






 次のスコップの旅は、どこまで進むのか?

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ミステリー・スコッパー 津々浦 麗良 @door-a-neko

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