4作目 『ジャンピング・ジャック・ガール/mikio』


 そうそう、今のところただ読んでばかりの様に見えるだろうが、実は並行して次作の執筆も進めてはいるのだ。しかし、なかなか思った通りの傑作に仕上がるには、時間がかかりそうだ。オレがこだわっているのは3点。


 ①誰も見たことのない奇想天外なトリック

 ②誰も予想できない意外性のある犯人

 ③誰もが読んで感動するクライマックス


 この3点さえ考え付くことが出来れば、すぐに執筆が捗るのだが。



「本当にそんなのが思いつくなら、そりゃあ傑作にもなるさ。だって、誰も見たことがないんだろ?」

「だろう? ちゃんとこうやってプロットは出来てんのになぁ~……」

「いやはじめ、それって乱馬に皮肉言われてるだけ」


 LI〇Eのグループトークで2人に新作の相談をしていたオレは、乱馬の嘲笑に気付かず、博士にフォローされてしまった。


 結局、小説談義は深夜遅くまで続いた。まぁ乱馬は途中で寝落ちしたらしいが。その為、次の作品は翌日学校に行くときにでも読むことにしたのだった。




          ♦              ♦            


感想:『ジャンピング・ジャック・ガール/mikio』



「やられた。これこそが、オレの読みたかったミステリー小説だ」

 電車の中スマホで読みながら、オレは小さく呟いた。なんせ、満員電車だし。


 ストーリーは、主人公の少女『鮎』がある日同級生の飛び降りシーンを見てしまったことからスタートする。最初は単なる『第一発見者』でしかなかった少女が、『ジャンピング・ジャック』という謎の言葉に挑んでいくという内容だ。

 高校生特有の感情の揺れ動きや恋模様、人との関わりや自身を構築する世界への向き合い方など、等身大の『青春』がそこには描かれていた。


 そもそもミステリー小説のほとんどは、殺人や自殺など人の生き死にが関わってくる。そして、動機や故人への喪失感などを書き出すと、どうしても暗く苦い話になってくる。これをどう料理するかがある意味腕の見せ所なのだ。

 この作品は、学生独特の空気とミステリー要素を絶妙に融合させ、一口で『青春ミステリー』と呼べるものに仕上げてあった。


 そしてこれは、どんなトリックよりも、どんな犯人よりも、どんな感動シーンよりも、実は一番難しいことなのだった。


 きっとオレは、またいつかこの作品を読んでしまうだろう。その時には、違った印象になるかもしれない。それでも、今のこの余韻を忘れはしないはずだ。



 迷わずオレは★3つ付け、思うがままにレビューを書き記した。





「はぁ~、こんな作品がまだまだ世に出てないんだよな」

「オレは、自分の才能を疑っては無いけど、今のところは全部完敗だらけだ」

「こうなってくると、逆にどれだけ読めるか試してみたくなるな」

「この作者のレビューからは2作ある。一つはコンテスト通過してるけど★1つ。もう一つは通過してないけど★3つ」

「ここはこの作者の評価を試してみるか。『名探偵・桜野美海子の最期/凛野 冥』、次はこれだ」





 スコップの旅は終わらない。

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