3作目 『男装探偵と女装娘見習いの世界浄化《world purge》/古雅鶴夢工房 』
「お~い、大丈夫? 死んでしまいそうなほど目のクマが凄まじいぞ」
もう一人の友人である
ここは高校の教室。今は始業前の休憩時間だ。
一晩で一気に2作読んだオレは、前日小説を書いたのも含め4日も徹夜してしまったため、睡魔にフルボッコにされてしまっている。
せめて休憩時間の間だけでも仮眠を取ろうと顔を伏せていると、博士が声をかけてきたのだ。
「いや、もう駄目だ。オレは死ぬ。犯人はヤスだ」
「何バカなこと言ってんの。どうせ、唐突に小説でも書いては見たもののこき下ろされて、勉強のために他人の小説を読んだ結果、予想外に面白くて読み耽ってしまい、眠気と挫折に打ちひしがれてるとかでしょ、きっと」
「大正解じゃねぇか。誰からそれ聞いた?」
「乱馬だよ。あ、ちなみに『カクヨム』を教えたのはボク」
「手の平で転がされてる孫悟空な気分だ……」
どうやら博士も『カクヨム』に投稿してるらしい。ジャンルはSFだと言っていたから読む気はないが、案外小説を書いてる人間は、身近にいるもんだな。
そんなこんなで休憩時間に眠れなかった俺は、授業をほぼ居眠りしてしまい、放課後担任に呼び出され、罰としてトイレ清掃をさせられてしまったのだった。
♦ ♦
感想:『男装探偵と女装娘見習いの
「やはりレベルが高いな……。しかもこれはどちらかというと、オレ達学生向けな印象だな」
へとへとになりながら自宅に戻ったオレは、早速次の作品を読んでみた。
第一印象は「マンガやライトノベル版のミステリー」って感じだ。
メインキャラクターは細かい部分まで設定されていて、彼ら彼女らの掛け合いだけでも結構楽しんで読むことができる。個人的には、『ファフロツキーズ現象』を殺人の動機の一部にすることで、この世の不可解な謎に立ち向かうという設定が気に入った。
ストーリーも、「一部完」と言った具合に一つの事件で区切りをつけているので、もっともっと掘り下げられる謎のワードが敢えて放置してあり、続編を期待させてくる。
ただ、この作品のメイン描写は、戦闘シーンにあると思う。だいたい、男装した美人が敵を倒すというのが、どちらかと言えば映像的な美しさだ。作者自身もこだわりがありそうだし、この部分に力が入っているのが分かる。
何が云いたいかというと、この作品は「小説としてだけでなく、ゆくゆくはマンガ化やアニメ化、ドラマ化も視野に入れられますよ」という魂胆が透けて見えてくるのだ。
個人的な意見だが、ミステリー小説は「小説だからできる、小説でしかできないトリックがある」ことが最大の魅力だと思っている。
勿論映像化することで、また違った見え方だったり、表現の仕方だったりがあるので、それを否定しているわけじゃあない。
小説であるメリットをもっと有効活用してほしいなと惜しく感じたのだった。
とはいえミステリーの垣根を低くし、若年層にも受ける要素を破綻無く詰め込んだ面白い作品だったため、一度は読んでもらいたいと思い、★3つで評価した。
「流石に一息で読み続けると、キツイものがあるな」
「さてレビューを見てみると……、お!? タイトルとキャッチコピーがやたらとカッコいいのがあるな」
「『ジャンピング・ジャック・ガール/mikio』、次はこれを読むとしよう」
スコップの旅はまだまだ続く。
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