2作目 『わたしはさくら/祭人』

「しっかし、思ったよりボリュームがあるな。10万文字越えとなると、結構時間がかかるぞ」

 ちなみに、オレは自慢じゃないが読むのが遅い。

 だいたいのミステリーは、登場人物が沢山出てくるし、誰が今どこで何をしてるのかまで把握して、更に犯人は誰かとかまで推理するとなると、時間をかけないとチンプンカンプンになってしまう。


 だからこの時はまだ気づいていなかったのだ。

 もう既にオレは、『カクヨム』という沼に足を突っ込んでいたことに。






         ♦               ♦            



感想:『わたしはさくら/祭人』



「なんてこった。滅茶苦茶面白いじゃないか」


 読み終わって思わず唸りを上げてしまった。

 というのも、正直オレは「所詮素人が趣味でインターネットにあげる作品なんて、ちょちょいのチョイでできたのばっかだろう」と侮っていたからだ。

 最初に読んだ作品が短かったことも相まって、片手間に読んでやろうと読み進めること3時間。

 ちょうど1本の映画を観終わったかのように、確かな満足がオレを襲ったのだった。


 こうなってくると、逆にあらは無いかと探したくなるのが、オレという人間の器の小ささである。

 誤字や脱字を発見しては、「こういった細部に気を配れないと、やはり駄目だよな」なんて偉そうに批評してみたりする。

 が、しかし、それでこの作品の面白さがなくなるわけでもなく、むしろ「せっかく綺麗に仕上がってるんだから、もったいない」という思いが募るだけだ。


 ストーリーの本筋は、主人公である『さくら』があるテレビ番組の企画にサクラとして参加し、その裏に隠された大きな謎に翻弄されるというものだ。

 殺人も密室もアリバイトリックも出てこないが、事前に情報を開示する・読者への挑戦がある・神の視点における虚偽の不可といった、古典的なミステリーを構成してきた要素がふんだんに使われ、現代版本格ミステリーと名乗られてもうなずける代物だった。

 

 敢えて欲を言うならば、キャラクターの意外性の弱さや犯人の予想のしやすさはあったが、そんなものは「こんな謎解き簡単すぎるよ」なんて偉そうにいう自称ミステリーマニアとしてでしかない。

 要は、「これほどの作品を自分も同じように書けるのか?」という問いが、確かにオレの心にずしりとのしかかっているのだ。


 オレは読み終わったのち、自分が読んだのと同じくらい時間をかけて、★3つのレビューを書いたのだった。





「さて、それじゃあ次の作品を探そう。しかし、この作者は結構レビューしてるな。しかも、ミステリーがかなり多いぞ。お? 『Webコンテスト予選通過しました』ってなんだ?」

「つまりこの作品以外にも、同じようにコンテストとやらに通った作品があるのか」

「なら、それも踏まえて探してみるか」

「『この作品が埋もれるようなら、カクヨムを「ご成敗、させて頂きます」 』だって。インパクトのあるレビューだな」

「『男装探偵と女装娘見習いの世界浄化world purge/古雅鶴夢工房 』。これにしよう」





 スコップの旅は、ここから加速していく。

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