6.切り株

 気が向いたので、ふらりと近所の公園へ歩みを進めた。


 そこには、小さな切り株がひとつある。


 あの人が、その横から生えた小さな芽を見て喜んでいた姿がうかぶ。


 元気に育ってますよ。と伝えれば、どんな笑顔を見せてくれるだろうか。


 すっかり育った芽を指でもてあそびつつ、愛読書のページをめくる。


 耳をすませば。


 遊ぶ子どもの声が。

 家事をする家の音が。

 店の呼び込みの声が。

 そして、あの人の笑い声と、僕の好きだった紙芝居屋の声が。


 僕が時を浪費する中、あの人は何をしているだろうか。


 筆だろうか。花だろうか。それとも、包丁やほうきや書類だろうか。


 そんな風に、切り株と話をしているのです。

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昭和街角散歩 @607rin

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