5.自転車

  夏の朝は涼しいから、久々に自転車で土手に行こう。

 そっさうと土手を行く姿は、まるでさわやかな夏の風がかけぬけて行く様に見えるだろうか。

 朝日は川に映って、美しくかがやいているだろうか。

 早咲きのひまわりやあさがおが、静かに朝つゆをのせているだろうか。

 それを見て笑ったあの人の顔は、今もあの場所にあるだろうか。

 確かめに行こう。今すぐに。自転車は、ねんきの入ったきしみ音をたてながら、僕の足となり、僕をあの人へとつれていってくれる。

 こんな僕と気長につき合ってくれる、この自転車は、僕の大切な相棒です。

 ならば今日は、苦笑しながらこわれてしまった相棒に、油をさして過ごしていようか。

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