4.手ぬぐい
僕の椅子には手ぬぐいがかかっている。母がくれた、金魚の描かれた、田舎の臭いのそんな手ぬぐい。
そうだ、あの人に贈り物をしよう。この手ぬぐいで包んで。何がいいだろう。
頂き物のワインを包もうか。
庭のよもぎを包もうか。
それとも本がいいだろうか。
刺繍の入ったハンケチはどうだろう。
扇子も役に立ちそうだ。
すいかを包んでみようか。
そんなことを考えているうちに、日はぎらりと輝き、虫の声が騒がしくなる。夏色が濃くなっていく中で、僕はいたずらを思いついた。
手ぬぐいに、おそろいの手ぬぐいを入れて送ろう。
今日は暖かい。歩いて届けに行こう。あの人の苦笑した顔を見て、一緒に笑い会えるように。そんな夏初日を過ごせるように。
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