3.時計

 これも愛用、父の形見の古い時計。たまに止まる。一からばらして僕が直す。また止まる。僕が直す。また止まる。いい加減いやになる。でも直す。これが愛着なのだ。

 ちらりと目をやってみる。しばらく目を伏せてもう一度見る。

 残念、まだ二秒しかたっていない。僕はそれほど我慢強くない。きっとあの人もそうだろう。暇は耐えがたいものだ。

 そういえば、あの人からの届け物に、ブランド物の革の時計が入っていただろうか。いい加減止まるオンボロはやめて、新しい物にしなさい。やはりあの人も、我慢強くはないようだ。

 愛着で手放せません。ごめんなさい。

 こんな手紙の返事を新しい時計と一緒に送ろう。郵便の時間は何時だろうか。時計を見る。おっと、またのん気に止まっている。

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