森の王

八枝

森の王




 なぜ醜くするのだ。

 おまえの鹿はどこへ行ったのだ。

 泥にまみれ、毛皮に傷を負い、獣くさい鹿は雄々しく跳ねてあんなにもうつくしかったのに。

 皮をはぎ、珍奇な装飾をほどこしておまえたちは称えあう。

 皮をはぎ、器用に加工しておまえたちは窺いあう。

 おまえは鹿をどこへ忘れてきたのだ。

 いのちをどこへ置いてきたのだ。

 なぜうつくしいままでいさせないのだ。

 鹿はガラスの目玉でおまえを見おろしている。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

森の王 八枝 @nefkessonn

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ