短編小説

@yu_to_pi_a

ライター






研いだ刃は鋭く、冷たく、そしてゆっくりとその指に食い込んでいった。

柔らかい女の肌は若さを見せつけるように触り心地がいい。

ふっくらとしていてなめらかだ。


「嵌めようとしているのよ、あなたを」


「嵌らないさ。残念だけどね。」


ぬるりと人肌よりも熱い愛液に溺れる自分のソレに、嫌悪感を抱きながら一気に彼女の腰を貫いた。

声にならない叫び声と吐息に示された快楽に気をよくして、私の理性は霞のように霧散した。

ただ本能に忠実に、獣のように


何度も


何度も


何度も


ひたすら彼女に腰を打ち付けた。

彼女の柔らかく甘い肌と自分の少し老いただらしのない肌がぶつかり合う。

吐息が混ざって、それでも彼女の甘い香りが勝っては私の本能を揺さぶり動かす。


彼女の体が快感で震える

彼女の顔が快感で歪む

彼女の指先が、爪先が、

私の腕や背中に食い込んで


痛みすら私の本能を刺激する。


彼女の溢れる吐息と涙を一つ一つ漏らさぬよう私の体内に閉じ込めて

くちづけを落としては確認するように彼女の顔を覗き込む。

じれったいのか、それとも快楽から逃げるためか、

彼女は体をビクンとはねさせ腰を大きくよじっては仰け反る。


「ダメだよ、っ、そんなことは」


「あぁっ、もう、やだぁっ」


「まだ許さない。私が、君を、っ、貪り尽くすまではっ」


「愛してる」なんて言えない。

言ってはいけない。

だから言葉は紡がない。

体は正直だというのは私も彼女も知っている。

お互い本能のままに貪り尽くせば、きっと

私たちは同じ夢が見れるはずだと夢を見て

今日も、明日も、明後日も

きっと私たちは癒えない傷をただ舐めあうのだろう。



この小さな灯火が消えたのなら、私たちは夢を見ることを終わることができるだろうか?



「あぁっ、もう、ごめん、私はっ」


「いい、っ、ぃ、からっ、このままっ」


果てよう。

未来永劫、遅ればせながら結ばれた君へ。

噛み合わないパズルは燃やしてしまおう。

おやすみなさい。

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