第25話「ミミのしっぽ」④
「ただいま」
道路の拡張工事のため、この辺りの家々は道路側が新しく奥が古いという奇妙な造りをしている。この家も例外ではないが、造り方が他とは違っていた。前半分と玄関までを新築し、古い半分の方をこの新築部部分に引っ張って来てくっつけるという荒技をやってのけたのだ。そのため玄関から道路側の半分が新しく、もう半分が古い。この建て方は結局家全体への負担が大きく、古いほうの壁にひびが入ったり、新築部分の床が歪んだりした。特に二階に位置する君の部屋は、新築部分と古い部分の境目に乗っているため、部屋の南北の壁に大きな亀裂が生じている。いつか卵の殻が割れるように部屋が真っ二つに割れるのではないかと思われたが、今まで何とか持ちこたえている。
「お帰りなさい、早かったねぇ」
「新幹線で途中まで来たから」
「いつまでいられる? 就職は決まってるの?」
「成人式が終わったら帰るよ。就職活動は少しずつやってるから、心配しないで」
君は祖母の質問攻めから逃げるように、自分の部屋に向かった。かつて使っていた君の部屋は半ば物置のようになっていて、埃っぽかった。
祖母は裏で漬物をいじっていた。毎年鮮やかな青紫色になる茄子の漬物の色が、今年は白かったとぼやいていた。納得がいかないという顔の祖母に、君は声を掛けて家の斜め向かいの地蔵堂に向かった。
ここの地蔵は子育て地蔵として有名だ。君も何度か県外ナンバーの車が地蔵堂の前に停まっているのを見たことがある。
君は曾祖母から地蔵についての起源譚を聞いたことがあった。
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