第18話「これはひどい」⑦
女性は、紐を手にしてステージに戻って来る。その足音はほとんど聞こえない。
女性はラジオのスイッチを切った。
「どう、苦しい? 辛い? これがあなたのやってきたことよ。でもね、本当にあなたがやってきたことはこんなもんじゃなかったんだから」
女性はそう言いながら、ベットに紐を結び始める。
紐の端を輪にして、自分の首をそこに通す。
「見なさい、これがあなたがやったことの末路よ」
女性が目を閉じ、床についていた足を投げ出す。
会場全体が息を呑む。
会場全体の照明が一気に落ちた。何も見えないほどに真っ暗になり、誰かの悲鳴が二つ聞こえた。その悲鳴は観客の中の女性のもののようだったが、観客の悲鳴を「観客」が模倣したのか、「観客」につられて観客が発したものなのかは判断できなかった。
ステージ上にはいつの間にか最初にあったつい立があったが、スポットライトは当たっていない。目が暗闇に慣れる間もなく、会場に薄暗さが戻ってきた。会場の隅では観客の一人が隣の男性の肩にすがって泣いていた。恋人らしいその男女の観客は、男性が女性を宥めながら退場した。当然の如く、この様子も舞台上の「観客」が模倣した。
しばらくして、ステージに再びスポットライトが当てられた。
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