第13話「これはひどい」②

 外されるつい立。

 その奥に黒のパイプベッド。清潔感が漂うシーツと布団には正しく折り目がついている。

 そのベッドの上に横たわる白髪混じり鬘を着けた女性、つまりは老婆。

布団からのぞく老婆の襟は紫の花柄のパジャマ。

老婆は瞬きをし、寝返りをうとうと身を捩る。

老婆はそれ以上動けずシーツを乱すだけに終わる。

直後、床を意図的に踏み鳴らすようなすさまじい足音。

真っ赤なスリッパを履いて黒いエプロンをつけた、痩せた若い女性が舞台袖から来る。

 女性が大股で踏み出すたびにスリッパの踵が、床を激しく打つ。

床を殴るような重い足音と鞭のような乾いたスリッパの踵の音が反響。

若い女性は黒髪を一本に束ねているがほつれている。

女性の手には黒塗りの丸いお盆。

お盆の上には食器と三角コーナーが載っている。

女性は無表情のまま、足音だけを響かせながらステージ中央のベッドに向かって直進。

 女性は老婆を見下ろしてわずかに棒立ちになる。

視線の先は老婆ではなく乱れたシーツと布団。

女性は瞬きせずにただ乱れたシーツと布団を眺める。

女性はベッドの横に正座。

女性はスプーンで茶碗のご飯をすくって何度か老婆の口元に運ぶ。スプーンはいつも大盛り。老婆の口に入る前に半分以上がこぼれるが、女性はこれを全く無視。

無表情のまま、何度も機械的な動きで空、もしくはこぼれずに残ったご飯を老婆の口元に運ぶ。

やがて首を大きく横に振る老婆。

しかし女性はこれも無視して老婆の口元にスプーンを持っていく。

唸り、むせる老婆。

女性の顔に老婆の唾や米粒がかかる。

女性がエプロンで顔を拭く。

「汚い」

一つ目の台詞を女性が発する。

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