第2話「蟻の枝」②

「あ、やっぱりここにいた。駄目だよ、あんまり早く見つかっちゃうとつまんないよ」

既にマンネリ化している遊びを、さらに使い古そうとするわたしの行動に、鬼は口を尖らせた。

 しかし、広い境内は隠れる場所に乏しかった。円形の境内を縁取るように並んだ石碑。その石碑に押し止められるように立ち並ぶ杉の巨木。それらの裏が子どもの隠れる関の山。

 プレハブ小屋に入ることが許されたなら、「かくれんぼ」の閉塞感も解消されるだろう。だが、「プレハブ小屋に入ってはいけません」というのが大人からの言いつけであり、子どもたちの間でのルールでもあった。湯を沸かすためのコンロや果物ナイフがあるからというのが、言いつけの理由。そして諸行事の物置としての役割も兼ねているプレハブは、見た目よりも収納力があり、探すのが大変だというのが子どもの事情である。子どもの事情は鬼の言い分とは一見矛盾している。だが見つけなければ終わらない「かくれんぼ」は、早く見つかりすぎても面白みに欠けるが、見つかるのが遅すぎても嫌気が差す。

 だから子どもたちは、杉の幹から幹へ、幹から石碑へと鬼の行動に合わせて移動し、器用に自分の体を隠し続けた。不器用なわたしにはできない芸当だ。

「じゃあ、次は鬼やるね」

「うん。でも他のみんなを見つけてから。手伝って」

「分かった」

わたしはばつが悪そうに頷いた。鬼に見つかったら、鬼の片棒を担いで一緒に隠れていた仲間を見つける。まるで、自分が裏切り者になった気分だ。最後まで隠れ続ける友人は、一体どんな気分なのだろう。徐々に仲間が鬼になっていくのを、どんな思いで見ているのか。勝者の優越だろうか。それとも恐怖や不安、憤怒や寂寥だろうか。

「大変、たいへーん」

わたしの名前を呼びながら、まだ見つかっていなかった三人が駆けてきた。これにはわたしも鬼の友人も虚を衝かれたような顔になった。先頭の友人は、何故か麦藁帽子を逆さにして両手で水平を保つようにして走ってくる。その表情は今にも泣きそうだった。

「蜂でも出た?」

「蛇?」

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