となりのゆうれい
○ 住宅地・全景(日中)
強い日差しと、蝉しぐれ。
住宅が、ぎゅうぎゅうの寿司詰め状態で立ち並んでいる。
○ 塚田家前~四ツ屋家前
二階建ての塚田家。隣接する家の屋根同士が触れ合いそうに建っている。
引越し業者のトラックが、路地に停まっており、業者の人たちが家具を塚田家
に運び入れている。
レイの声「引っ越してきた人?」
塚田家右隣の住宅(
めている。
崇 「(立ち止まり)そうだけど?」
レイ「(真顔)知ってる?」
崇 「……え?」
レイ「あそこ」
レイ、塚田家二階に向かって指を指す。
崇、怪訝そうにレイの近くまで歩き、指先の方向を目で追う。
レイが指し示しているのは、四ツ屋家に面した側の一室の窓である。
崇 「あ、俺の部屋」
レイ「出るの」
崇 「(レイを見)……出るって?」
レイ「(不敵に笑み)ユウレイ」
崇 「……(嫌悪顔)」
大輔の声「おーい、崇!」
○ 塚田家・リビング窓際
塚田
大輔「さっさと荷物運んで、こっち手伝ってくれ!」
塚田
○ 塚田家前~四ツ屋家前
崇、塚田家の方を見ている。
崇 「はいはーい、すぐ行く!」
と、対峙していたレイに向き直る。
が、レイの姿が忽然と消えている。
崇 「き、消えた!?(キョロキョロ)」
四ツ屋家の玄関ドアが開く音。
☓ ☓ ☓
レイ「ただいまー」
と、四ツ屋家屋内に入っていく。
☓ ☓ ☓
崇 「……隣んちかよぉ」
崇、玄関に向かっていく。
○[タイトル]『となりのゆうれい』
○ 四ツ屋家~塚田家の狭間(夜)
四ツ屋家の下屋根(一階と二階の間の屋根)から、塚田家の下屋根に、少女
(レイ)のシルエットが跳び移る。
○ 塚田家・リビング
崇、大輔、麻美、食卓に座り、テレビを見つつカップ麺を食べている。
崇、浮かない顔つきで食が止まってる。
麻美「しょうがないでしょ~。荷物整理で夕食まで手が回らなかったんだから」
崇 「ああ、違うよ」
麻美「?」
崇 「この家って、いくらくらいしたの?」
大輔「どうした、急に?」
崇 「いやさ、昼間に隣の子が――」
麻美「あら、もう会ったの?」
崇 「え?」
麻美「隣の子、可愛かったでしょ?」
☓ ☓ ☓
(インサートフラッシュ)
不敵に笑うレイ。
☓ ☓ ☓
大輔「同い年だってな。(ニヤニヤ)なんだ、崇のタイプだったかぁ?」
崇 「はぁ? 違うって!」
麻美「よかったわねぇ~、可愛い子が――」
崇 「だから違うって! ああもう!」
崇、立ち上がり、リビングを出て行く。
○ 塚田家・崇の部屋
引っ越しの荷物が乱雑に散らばっている。窓際にベッドが組み立てられてあ
る。窓にカーテンは無し。
崇、入室。部屋の明かりを点ける。
と、窓越しに向き合っている四ツ屋家二階の一室に明かりが灯る。
崇 「――(それに気づく)」
四ツ屋家一室。閉じているカーテン越しに、少女のシルエットが動いている。
崇、ベッドに乗り、窓を開け放つ。
崇 「ねえ、ちょっと!」
四ツ屋家一室。カーテンが少し開き、四ツ屋ユウ(13)が怪訝そうな顔を見
せる。(ユウはレイと瓜二つの顔)
崇 「昼間のことなんだけど、あれってどういうこと?」
ユウ「……(気味悪がる表情で)」
応じることなく、カーテンを閉めきる。
崇 「(ムッと)……なんだよ」
と、崇、自宅と四ツ屋家の下屋根が接しそうなほど近いことを視認。
○ 四ツ屋家・下屋根
崇、塚田家の下屋根から、四ツ屋家の下屋根に跳び移る。
崇、ユウの居る一室の窓をノック。
崇 「無視ってひどいんじゃないの?」
ユウ、カーテンを開ける。
ユウ「なに!? あなた誰?」
崇 「……誰って、昼間会っただろ? そっちから話しかけてきたんじゃないか」
ユウ「会った? ……(思案し)ああ、レイに会ったのね」
崇 「……はい?」
ユウ「引っ越して来たの?」
崇 「いや、だから、そうだって……」
ユウ「気をつけて。レイは性格悪いから」
ユウ、カーテンを閉じる。
崇「ま、待って!」
崇、窓をノックするが、カーテンは閉じられたまま開けられることはない。
○ 塚田家・崇の部屋
崇、窓を乗り越え、ベッドに降りる。
崇 「やべぇ、電波さんかよ……」
と、崇が乗ったベッドがガタガタと揺れ動き出す。
崇 「え、え、え!?」
崇、顔を床に向ける形で、ベッドの上に四つん這い。
と、ベッド下から、レイの顔がにゅっと出てくる。
レイ「――(真顔)」
崇 「(恐怖)……な、なんで」
レイ「――(不敵に笑む)」
崇 「うわぁぁぁっ!」
崇、飛び退き、背中を窓に押し当てる。
床から伸びた両手が、ベッド端を掴み、レイの顔がベッド上に出てくる。
崇 「!?(恐怖)」
と、開いている窓からユウの声。
ユウ「ちょっと、近所迷惑なんですけど?」
崇、顔を横に向けると、下屋根にいるユウが窓の外から顔を入れ、崇を見てい
る。
崇 「――(気絶)」
○ 同・崇の部屋前・廊下
閉まっている崇の部屋のドア。
部屋の中から、ユウとレイの会話。
ユウの声「(落ち着いた声で)……レイ、どうしてあんたが隣んちにいるのよ」
レイの声「(楽しそうに)やだなユウ姉、引っ越しのご挨拶に決まってるでしょー」
と、廊下から足音が近づいてきて、崇の部屋のドアを押し開ける。
麻美の声「崇、ケーキあるから食べる?」
崇の部屋内。崇、ベッドで気絶している。ユウ、窓枠に座っている。レイ、ベ
ッド下から上半身を出している。
ユウ、レイ、ドア入り口を向く。
ユウとレイ「おじゃましてます」
○ 同・リビング
廊下から激しく近づく足音。
崇の声「出た出た出た出た、出たー! 幽霊が――」
息を切らせた崇が戸を開く。
大輔、麻美、食卓に並んでいる。
食卓にはケーキと紅茶が、四セット置かれている。
大輔と麻美の向かい側の席に、ユウとレイが並んで座っている。
崇 「……(状況を把握)」
大輔「おう、寝たんじゃなかったのか?」
麻美「もうちょっと早く来ればよかったのに、あなたの分、無いわよ」
ユウ「あ、私、まだ手をつけてないので」
麻美「いいのいいの、遠慮しないで、ユウちゃん」
崇 「……ユウ? ……と、いうことは……」
崇、レイのもとへゆっくり歩み寄っていく。
崇 「こっちが――」
レイ、ケーキを咥え、走りだし、リビングを出て行く。
崇、走って追いかける。
麻美「あらあら、仲良しねぇ~」
大輔「タイプはレイちゃんだったか」
ユウ「?」
[END]
【シナリオ】 となりのゆうれい のうみ @noumi
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