第一回

"ここはどこだ...?"

それが一番最初に思った事だった。だけど今ではどうでもよく、ひたすら前に進んでいた。辺りを見てもただ黒くて、何かあるのかもわからない。ただ、その黒というのは、暗くて何も見えないという訳ではなく、クレオンで塗りつぶしたような黒だった。自分の手はっきりと見える。だから、何か見えればハッキリと見えるはずなのだ。何かを求めて進んでいくと、見覚えのある顔が見えた。それは幼馴染みの菜利沙だった。

「な、菜利沙か?」

彼女は静かに頷いた。

「透、久しぶり。」

何を言っているんだ。昨日あったばかりじゃないか。と言おうとしたが、ここでは時間が早く進むのかもしれない。だとするなら、今言うことではない。話す言葉を探していると、先に菜利沙が口を開いた。

「ここには何もないから、少し話そうよ」

確かにここには何もない。今探すことを優先して、菜利沙とはぐれてしまったら、元も子もないではないか。そうだねと言って、菜利沙をしっかりと見た。彼女はラベンダー色のワンピースを着ていた。足元はぼやけていてよくわからなかったが、どうやら裸足のようだった。

「そうだな...。何か透は聞きたいことがある?」

これはチャンスだ。菜利沙は落ち着いている。きっと此処が何処だか知っているに違いない。

「じゃあ聞くけど。此処が何処だか分かるか?」

彼女は少し考えて、言った。

「透はどう思うの?」

まさかのブーメラン。菜利沙だったら即答で分からないと言う。何か考えが有るのだろう。

「夢、、、だと思う。だってこんな場所、有り得ない。」

「ふーん」

菜利沙は意味深な発言をしながらフフッと笑った。

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サエセカ 瀬葉 亜利為 @arisuworld

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