第13話 光降る‐imagination‐

 サハラ上空、標高10000メートル、南下、空中を歩む。


 白い地面――遮るもののなにもない光色の世界。


 熱のない光がドウッと落ちている――旅人の傍らを、純粋な重みで真直ぐに。



 両の腕を広げて広げて、人の姿の影を光色の地面の上に映している。

 旅人は、命の気配のない光色の地面の上空を恐れながら進む。


 彼方に眼を凝らす。


 やがて真っ白な地面の上に、ペン先から滴り落ちたインクの染みのような黒い影が見え始める。

 ひとつふたつ、そしてまばらに、だんだんと寄り集まって影は増えていき――。


 旅人は高度を、少し落としはじめる。


 降る光が、穏やかに、木々の姿を見せている。黒い影は命の印。

 息吹の重なりあって潜むものたちの匂いもする。


 地面は徐々に赤錆びた色へと移り変わり、水の流れや屋根、動きまわるものたちの姿も見える。


 サバンナの風が、サハラの凛とした空気と交代する。


 旅人は高度をさらに落として、着地する場所と時とを選択する。


 翼をたたみ、人の群れに紛れて、休息と憩う相手を求めるために。

 

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物語師の手帖 【小品集】 織末斗臣 @toomi-o

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