カレーメシ シーフード+ガブうまハムカツ 3/3

 それでは、いただきます。

 フタを開けると……ん、なんだこれ。まだルゥが溶けていないし、やたらと泡立っているけど。

 改めてカップの横の作り方を見てみると、『とろみがつくまでグルグルとかき混ぜる』か。

 よーしはみさん混ぜちゃうぞー。

 ぐるぐる、ぐるぐる。


 …………。


 まだかなまだかな。

 ぐるぐる、ぐるぐる。


 …………。


 うん、いい感じで溶けたかな。

 どろーり感とカレーのスパイシーな香りに食欲が刺激される。

 食べたい! 食べたい!! パクッと一口。

 おおお……これはまさにカレーライス。

 シーフードカレーってひさしぶりだな。カレーのスパイスと魚介の風味がものすごくマッチしている。おいしい。

 しかし二口、三口と食べていくと、うーん? おいしいはおいしいのだけど、なんとなく物足りなさを感じる。

 具のいか、かにかま、にんじんも特に文句ないし。特にいか。

 ルゥに対してごはんが足りないのかな……。


「はみ」


 がぶりんの背にまたがって、なにやら輪っかハムカツのあたりをいじいじしている助手に話しかけられ、私はちょっとムッとする。


「なんですか助手ちゃん。私今食べてるんで邪魔しないでくれませんか」

「そう怖い顔をするな……。私の見立てでは、『ガブうまハムカツ』を入れると最高だと思うんだ」

「カレーと揚ゲ物は相性ばっちりダゾ!」

「は」


 しまった。私としたことが、揚げ物トッピングを忘れていたとは。妖精さんに指摘されるまでやらなかったなんて、ちょっと悔しい。

 それよりも、がぶりん、なすがままだなあ。『ガブリエル』って大天使とかだっけ? この大物っぷり、さすがの大天使ってとこか(半分馬だけど)。えすことは一味違うな。


 よし、じゃあ満を持してハムカツ投入だ!

 サクサク、まんまる、それでいて1cm以上あるのではという分厚いハムカツをカップに投げ入れる。

 ……こ、これは、なんとびっくり。

 まんまるなハムカツが、丸いカップにすっぽりはまって完全にカレーに落とし蓋状態にっ!?

 サイズ的にも相性バッチリ、なのか。

 ではお味の方も。片面をカレーにひたされたハムカツをすくいあげ、ガブりと。

 さくさくー! 分厚いハムがしっかり肉肉しい!

 それでもってやっぱりカレーと揚げ物、間違いない。スパイシーで濃厚な味がサクサクな衣を引き立ててもう最高だね。

 ハムカツについてきたソースもかけてみるか。

 中濃ソース小袋を中身が飛び出さないように気をつけて開封し、ハムカツにどろりとぶっかける。

 ううおお、ちょっとソースの酸味がきいてもこれまたおいしいー!

 なんてこった、カレーメシとハムカツ、いろんな意味でベストカップルじゃないか……。


「助手チャン、そんなにまさぐるのヤメテヨーくすぐっタイ!」

「べ、別にあれだ、研究のために触っているのであって……そう! データ収集のため! 別にやましいことなんてないんだからっ!」


 とかなんとか言いながら、さっきからがぶりんの背中にムダにくっついてるよねえ、助手。このツンデレめ。がぶりんはがぶりんでなんだかまんざらでもない様子だし、いいか。

 百合百合しさを眺めつつおいしく完食。ごちそうさまでした。いろんな意味で。



「ソウだ!」


 背中の助手を振り回して、がぶりんがこっちへ勢いよく振り向く。助手、根気強いな。なんとかしがみついてる。


「アノねこからメッセージをあずかっていたノダ!」

「え! ほんと!? なになに!?」


 あのとき、膝の上にいたのはこの子だったのか。まあ、同じの食べてるわけだし、そうなるのか。


「大天使でメッセンジャーたる、がぶりんが告げる」

「…………」


 急に威厳たっぷりなしゃべり方になったな。がぶりん、やればできる子。

 心の中でちょっとつっこみつつ、静かにその言葉を待つ。


「『にゃーん』」


 …………。


「……は?」

「だから、『にゃーん』だ」


 まあ……ねこは……そう……まあ……そうねえ……。


「って、それだけですかー!?」

「そウ、『にゃーん』。一字一句間違えてナイゾ!」


 頭痛い。期待して損した。

 ……いや、待てよ。

 SNSとかでよく、なにか言いたいのだけど困ったあげく「にゃーん」と言う人もいるわけで。

 なにかもっと話したいことでもあったのかな。

 深読みしすぎだろうか。うーん……。

 まあいいや、彼は「またそのうち」って言ってたし、そのときには話でも聞いてみよう。ねこは気まぐれ。特に意味はないのかもしれないし……って、そもそも、現れてくれるのかな。そこもまた、気の向くままなのだろう。

 いろいろもやもやするが、とりあえず今は私も一言、つぶやいておこう。


「にゃーん」


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