葛尾はみと年末の戦場C93
肉まん
ここはビッグサイト……
作戦地区名コミックマーケット93……
最前線中の最前線!
地獄の激戦区コミックマーケット93!!
まさにそんな感じだねコミケ。命知らずの
閑話休題。
ちょーっと『艦これ』同人誌でもー、と気楽に来てみたら、これはまあ……大変だね。
昼くらいに着くように来たから入場制限もなく入れたけど、この人の数はやっぱりすごいね。
そんなわけでとっても混雑している艦これエリアを離れてふらふらしてみると――んー、このあたりはなんか、いろんなゲームが混ざっているな。レトロなのもけっこうありそう。
ふと、文庫サイズの本が目に留まる。分厚いなー。小説かな?
タイトルは『レトロゲームと古本屋』。表紙のイラストに……なんだろう、この感じ。親近感?
「よろしかったらどうぞ、お手にとってご覧くださいー」
サークルの人に声かけられた。では、お言葉に甘えて「拝見させていただきます」とページをぱらぱらめくる。
ふむふむ、古本屋でゲームを楽しむ日常モノね。悪くない。
それにしても、どこかで聞いたことあるようなお話な気がするけど、どこで聞いたんだっけな……? うーん、なんか記憶にもやがかかったような感じで、思い出せない。
まあいいか、買ってしまおう。
「あの……これ一冊ください」
「あっ、はい! ありがとうございます!」
お金を渡し、本を受け取り、お気に入りのインベーダー柄のトートバッグにしまいこむ。たくさん入るのでイベントにも便利なんだよね、コレ。
「ありがとうございましたー」
サークルの人のこの声も、どっかで聞いたような……。
首を捻りながら、私は再び人の波をかきわけていく。
っだあー! つかれたー!!
ああ、トートバッグぱんぱんだー。
艦これ目的で来たはずだったのに、その他ゲームとか音楽系とかも目一杯楽しんじゃったよ。
よし、これでなんとかビッグサイトから脱出だ。
……って、寒ぅ!?
なんかこう、毎年思うんだけど、首都圏の冬って耐え難い寒さなんだよね。なんでだろ。
地元だともっと気温低くて雪も積もっているという生活をしていたのにね。湿度とかかな。
あとさらにこの辺は海辺ってのもあるからかなー。風が……冷たい!
よし、さっそくさっき手に入れたお助けアイテムを使うとしよう。
ちょっと退避退避。人の少ないあたりを探して……あ、ベンチがある、ちょうどいい。座っちゃおう。
周りの人たちは、戦利品にほくほくしながら足早に駅に向かっている。まあそうだよね、こんだけ寒いとね。
そんな人の流れを尻目に、私はトートバッグとは別に持っているビニール袋からがさごそと紙の包みを取り出す。
はあー、あったかい……。癒される。
やっぱ寒いときはコレよねー、肉まん!
いただきまーす。と言いつつもまだ包みからは出さない。
食べてしまいたい気持ちを抑えて、まずは冷えた手を温める。
でもでも、あんまり温めすぎると肉まん自体が冷めちゃうからね……うん、そろそろ食べよう。
包みを開けると、ふわっと湯気が舞う。
冬のごほうび、だねえ。
大きく一口、かぶりつく。
んっ、もちもちの皮! そしてジューシーな肉!
最近のコンビニ肉まん、どこもクオリティ高いんだよねー。ちょっとお値段も上がっているけど。私的にはこっちのが断然いい。
もっちり厚めの皮の食感に、肉多めのしょっぱい具が、もうたまらん。たまにタケノコのシャキシャキ食感が混ざるのがまた、いい。
ぺろっとなくなっちゃうのが悲しいところ。
はあ、ごちそうさまでした。
「もう食べちゃったの! 早いよー」
おや、お宝満載のトートバッグから小さな影が顔を出す。
私がひとりでジャンクフードを食べていると現れる、謎の妖精さんだ。
チャイナドレス姿が……ちょっと寒そう。
あ、なんかさっき買った小説の表紙にいた、おだんご頭の女性に似ている。
頭上には大きなおだんご……と思いきや、それ肉まんー!?
「まだお腹空いてるよね? 仕方ないなあー。あたしの頭をお食べよ」
勝手にそう言うと妖精さん、自分の頭から……肉まん、むしり取ったー!
と思ったら、そのまま倒れたー!?
「肉まんがなくなって力が出ない……」
「なんでむしり取ったし……」
やれやれ。ドジっ娘にもほどがあるでしょ。
はあ……多少あったまったし、帰ろう。
ちょうどいい、そのままトートバッグの中でおとなしくしていてくださいね、妖精さん。
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