第33話 私の中の二面性


 今日書くことは、揺れている。何年か前に書いたことが使い物にならない。それくらい、日々進化していく考え方。



 わたくしは、女である。

 生物学的な観点において、性別はFemaleに属している。


 でも、自分の中には、色々な自分がいて、そこに性別らしきものをいちいち当てはめることはない。二面性どころか多面性。

 これはとてもナーバスな問題で、一言発すれば、その反面には必ずと言っていい程に違う意見がある。のほほんと生きていても、ちくりと棘が刺さる繊細な問題が、そこにはある。


 人って、そこまで性別がくっきりと分けられないと思う。男っぽいとか、女っぽいとか、それは全てイメージであって、一人の人の中にも色々な自分がいる。常に女を意識して生きているわけではないのです。


 生きていくうえでの曖昧さ。人が作り出したイメージに囚われない人が世界には数多いて、私が何であるかなんて最早どうでもいいことなのかもしれない。子孫を残すことにおいては必要だけど、心の繋がりは男女関係ない。


 多様を認めていく風潮にあれば、自由に生きられそうなものなのに、実は心を開放していくことは、以前よりも窮屈になっている気がするのはどうしてなんだろう。

 毅然として誰も求めずいられたらいいのに、と逆に閉じこもってしまいたくなってしまうんだ。



 男は、とか、女は、とか大声で言う人は減った代わりに、誰もが自由につぶやく言葉には、案外本音が含まれている。そして、それが垣間見えた時に複雑な気持ちになっていく。


 決めつけは嫌だけれど、そんなに簡単に変な常識めいたことは変わらずに、言わない代わりに歪みが生じているのかもしれない。

 私はあまり他人のあれこれに興味がない。割と右から左にスルーしてたりする。十把一絡げにして考えられたくはない。でも、心で考えることは、今まで影響されてきたことを払拭しているとは言い難い。



 少女の頃に少年のようだった。いつも自分の中に、誰が相手だろうとも、何処であろうとも、そんなのに関わらず一人でやっていける人になりたいという意識が、小さな頃からあった。あまり人に弱みをみせないかわいくない子だったと思う。


 いつか、ここではないどこかに旅立つんだ。そう想って、瞑想、迷走していた。誰も頼らずに生きていけたらカッコイイじゃないか。


 とっくに大人になった今の方が、だめみたい。すぐ人との関係に湿っぽくなりやすい。さみしがりやで、すぐ泣いて、すぐ人を頼っていた。ああ、情けなくなったもんだ。たとえ内情がだめだめでも、どこか凛としていられたらいいのに。


 男の方が孤独に強いならその方がいいなって思っていた。でも、人は誰かといても独りであることにかわりはない。大人になるにつれ、はっきりしていく現実。そこに、男とか女とか、関係はない。


 文章を書くようになって、色々な人に出会った。私はとにかくすべてにおいて思いはあるけれど、決めつけるような人にはなりたくない。



 女であるが故、男を意識する。ということが恋であるならば、すきになる人、私の恋愛対象は90%男性であった。100%だと思うけど断言はできない。

 女としての本能から求める感情と、男の生き方に対するあこがれが半々なんだろうな。いまだに男というものに幻想を抱いているらしい。それは言葉において。


 私の本棚を見ると、男性作家が九割なのも自分を表している。残り一割の作家も、女性でありながら男前の雰囲気の人が多い。向田邦子さん、梨木香歩さん。


 自分の中に棲む自分の性。すきになる相手の性。でも、男前って、なんだよ。


 最近、作家志望の仲間がたくさんできて、面白いのは二次元の印象だ。名前から女だと思っていたら男だった。逆もしかり。実際会ってないわけだから、その申告すら本当かどうかもわからない。つまりはお互いに気が合っていれば、性別はどちらでもいいわけだ。人としてつき合っている。


 こうして何かを書きつける時に、ぼく、或いは、僕を使って書くのがすきだ。きっと読んでいる人が、女が書いていることにすぐ気付くくらいの軽さが、自分にとって心地いいんだ。主人公が男の子の時だけでなくね。


 ここでも「ボーイッシュ」で 「ぼく」にあこがれていたことや、「雨の記憶」の回を一人称「僕」で書いてみたりした。


 すきなように心を傾かせながら、色々な一人称になってみたい。揺れて、なりきって、演じて、遊んでみたい。今の僕は、そんな風に思っている。


 そして、本当はこんなことを意識せずに、生きていけたらそれが一番いいのに、と思っている。




 きっとこの回は、数年したら、まったく別の文章になる。

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