第1話/2
/2 事後(2)
ざあざあと雨にしては乾いた音に意識を浮上させる。目を向ければ――成る程。TVをつけっ放しにしたまま寝てしまったらしい。画面は電波と砂嵐を休むことなく放出していた。
起きようとして――あぁ、やはり動物というのは睡眠時と性交時が一番危険だという事を再認識する。体が重い。体調不良では無い。外部からの物理的負荷である。加えて鈍痛を体の数箇所で発信中。
……左脳しか働いていないようだ。今日はこのままいこう。要約、違う。簡単に、いや。ありのまま、これだ。
つまり現状を説明すると、
そもそも
「…………」
無言で布団代わりになっている
砂嵐、砂嵐、色彩テストコード、砂嵐、色彩テストコード。正式名称は何だろうな。ぶつん。
……まだ覚醒しきっていないらしい。寝起きに弱いこの状態がいつかのっぴきならない事態を招くのでは? とか
あぶない。もしかして、俺は凄く九死に一生だったのではないだろうか。
覚醒してきたようだ。おもむろに百合の手からナイフを
ようやく俺の身の安全が(遅ればせながらも)保障された。コイツのことである、いつか夢の中でエンジョイしつつも現実世界の俺を殺しにかかってくるに違いない。
……それにしても、本当に幸せそうな顔である。寝巻き代わりのジャージからジーパンに履き換えながら思う。自問のレベルだがどうだろう。
Q:しあわせそうにねているかおって、いたずらしたくならないかい?
A:なるです。
情報更新。右脳も起きたようだ。目覚めのシチュエーションは最悪だったが、コンディションは悪くないらしい。それでは両方使って、今の状況をどうするか、最も良い方法を導き出そうではないか。
体が汗ばんでいる。シャワーを浴びよう……これは後で良いな。
空腹状態は。……寝起きでそこまで活動的ではない。風呂の後だ。
時間の確認。……そうだな。午前四時、七分。なんて半端。
悪戯決行。――それだ俺。
さて、どうしてくれようか――振り返ったところで、目が合ってしまった。やばい、考えてる間に起きたか? それともコイツは俺より生存本能が発達しているから
「ふ? きりえ、おきたのぉ……?」よし覚醒度だいたい五割。いける。
「あぁ。今さっきな」
腕が伸びてくる。首に絡みつく。えへへと無邪気に笑う。釣られて口元が緩む。
ぎち。
頚椎の辺で痛み。爪を立てられている。
「ねぇ~~ちゅうしよぉ~~?」上目遣い。ぎちち。ぬめる感触。血が伝っている。コノヤロウどんだけ刺してんだ。
「あのなぁリリ」顎を上げてやる。案の定「ん……」とか目を閉じる馬鹿。
その隙に頭を下げて腕から逃れる。顎にあった手を外し、片手で百合の両手首を掴んで――
どちゅ。
「こんな時間に盛んな」
キミを
「キリエばか。ひーどーいー!」
ぎちぎち暴れる百合をほったらかしにして風呂に向かった。
……また見られている。しかも何かヨコシマな笑みつき。
「なんだよ、見んなボケ」
「ねえキリエ、良いことあった? わたしの顔でそそられたりしましたか」
「…………」
キャンプしようかなぁ。そうすればテント設営もバレないんじゃないか。こう、木を隠すなら森の中、みたいな。
シャワー浴びよう。
/
格好を整え、朝飯はもうドトールとかで良いやなどと考えつつ部屋を後にする。
「ねーキリエ」
「……なんだよ」
からから。
「殺したい」
からからから。がちゃん。
そういえば、と地下一階から地上まで続く、件の階段を上りながら思い返す。
雑多な思考に
マフラーに口元を隠す。雪が積もっていた。
自販機の横で、赤茶の猫が死んでいた。
感想。まだ
120円で出した缶汁粉を飲む。
感想。ぬるい。
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