真実を購うための腕
会所は港から伸びる
伊都は
会所は市舶司の執務と社交の場、その広大な敷地には市舶司の
この港に入った
この港に入ったことのある海船には
綜白が三人を案内したのは会所の公的な応接室ではなく、邸宅の
浩阮は警戒を露にして、
端的にいえば、この綜白という男に興味を持った。これまで把栩が会ったことのない種類の人物であると、僅かなやり取りで感じたのだ。
その居室は華美な装飾のない、少し閑散としたした印象を受けた。
さすがに花瓶に花があるが彩りを潤す程に至っていない。入り口に置かれた
前任の老市舶司の好みはこのようではなかった。今、目の前にいる男の趣味であると言われてこれほど納得のいく室礼というのも珍しい。
綜白は茶器を自ら並べた。伊都に降り立ってから、把栩らは未だこの男の他に何者とも出会っていない。
向かい合う形で腰掛けた綜白は冷めた
「若君は訝しんでおられるな」
うなずきはしなかった。……これは今、己が身に付けるべき駆け引きだと承知していた。
綜白は続ける。
「さもあろうな。街の様子の変わりように」
酷く喉が渇いていた。だが目の前に置かれた茶杯も手を延ばすことが躊躇われる。その表情に乏しい男は頓着なげに、己の茶に口をつけた。
「……あぁ、酒の方が、よろしかったか」
唾液を一度飲む。正直をいえば、酒が欲しかったかも知れない。
把栩は爺に持たせた文箱を取り、
「ここに帰還を申し上げる。勘合の照合と荷の改めを願います」
「長旅の末、無事のご帰着は喜ばしいかぎり。……本来ならばささやかながらの宴なりと設けるとことであるが、お察し下さるな?」
「……大夫の胸の内など若輩の身のこの私に分かろうはずもございませぬ。ただ、此度は辞退させていただく」
綜白は把栩の茶杯に目をやった。
「何か盛られても、困る。と?」
浩阮の顔色が変わるのが、背にしても分かった。同じように顔を見なくても、把栩の
わざと、ゆったりと構える。
それができたのは、爺がいたから。いつもと同じように、穏やかな気配が己の背後にある。
「どうやら大夫は私の知らぬ何かを御存知のようです」
「多少」
「それを我等が
「ほう?」
綜白は意外な表情をした。
だが把栩からすれば、さほど珍しいことではない。
だからこの市舶司の
「さすがは揮尚の若君よ。さらば、いかほどで」
「
それまで笑みを浮かべてもどこかそらじらしかった男の顔に、変化が起きた。それまで目前にしながら、ただの「
「ならば、『品物』を並べねばなりますまい」
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