鋭き眼差し
港にも入り江にも船がまったく見当たらなかったから把栩は副船を
それは何事かの
浩阮は弩弓の届かぬあたりで待つように汐迅に示しただけだった。いつももならあれこれと気を回して、二言三言と付け加えるというのに。
……港とはこんなにも、広いものだったのか。
把栩は目の前の人物に対峙しながらそう思った。その市舶司の身形を整えた人物に覚えはないのだが、それが誰であっても今はどうでもよいことのように思われた。
背後には爺と浩阮。二人は略式ながらも衣服を整えていたから、衣擦れの気配が感じられた。
副船の帆が新に風を受ける音がした。櫂の
把栩はひとつ、息を吐いた。
「新に任じられた市舶司とお見受けする。帰還の儀、賜りたい」
その男を印象付ける第一は、切れ長の瞳と面長で整った顔立ち。それは愛嬌のようなものはすべて削ぎ落とされて、ただ、鋭利な顔立ちというものがあるのならば、この面構えこそがそれであると思えるような眼差しだった。
そして、左にだけ穿った
筒状のそれは、本来ならば筒穴に糸を通して垂飾するためのものだ。だが男はそれを直に穿っていた。そもそもが女物の
把栩は礼儀に従い、跪礼した。
無位ではあるが、彼の氏に賜った
男は立礼で返した。
「揮尚の
把栩が言葉を返すより先に綜白は会所へと促した。
「供の方々も、……こちらへ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます