雷が鳴る前に

作者 波留吉久

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★★★ Excellent!!!

一瞬書店で買った本を読んでいるのかと思いました。
キーアイテムや仕草などを効果的に多用することによって自然と情景や心情などのイメージがわいてきて……
読んでいる、最中は、いいんだけど、正直、今、レビューを書いている、このとき……めちゃくちゃ嫉妬してます。

★★ Very Good!!

雨が降り、雷の気配が近づく空模様。わざわざ家から、人のいない学校へと向かう少女と少年。
屋上へ上がり、雷を待ちながら、二人は話をする。

TS(性転換)――中でも入れ替わりの物語には、入れ替わった時と同じことをすれば元に戻れるというタイプがある。神社の石段で一緒になって転げ落ちるというパターンが基本だが、頭をぶつける、キスをする、などバリエーションは多く……その中には、ともに雷に打たれるというものも。

雷が落ちてくれるのか。それで本当に元に戻れるのか。そもそも、元に戻りたいのか。
入れ替わりは、身体も立場も交換して生きることになる。慣れない生活のドタバタが物語序盤の売りになることは多い。しかし、互いにそつなく相手になり替わることができていたら? むしろ入れ替わってからの方がうまくいっているとしたら? 端的に語られるいくつかの言葉から、読者は少年と少女の現状を推測させられる。
最終的な結論へ至る過程が最大の読みどころ。緊迫感ある会話の果てに、晴れやかなラストシーンが待っている。