第9話 骨格標本5

コゲッーゴォッー!

 首を、切り落とされた鶏の苦痛の鳴き声が養鶏場に響き渡る。食べられるだけに育てられてきている鶏は、自分がいつ殺されるかも知らずにのうのうと餌を食べ排泄する毎日を繰り返す。


「見て入られません」嗚咽を我慢するように優人は言った。

 優人の目は、工場見学に来ている小学生の目ではなく現実を知り漠然とした目だった。

「これが現実よ。あなたが食べていた鶏や牛、豚もこの様に肉になっていくのよ」

 優人は、この状況で平気な顔をしているさやかが、気になっていて覗き込む様に顔を見た。

 その顔は、綺麗な黒髪に潤んだ瞳が似合ういつも通り綺麗なさやかだった。

「この状況でも平気なんだ先生は」

「さぁ帰りますか」

「佐々木さんありがとうございました」

「いえいえ、骨格標本頑張ってください。お弟子さん。さやかさんは、めったに弟子なんて取らないんですからラッキーですよ」笑いながら言った。

「余計なことは言わないの」怒っている口調だったが顔は笑っていた。

 帰りの車の中で次に作る作品の話をしていた。

「先生次は何を作るのですか?」

「それはもちろん鶏の骨格標本でしょ!」

「そうですよね。頑張ります!」何かを掴んだのかやる気に満ち溢れている口調だった。

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狂愛 ~僕と先生のゆがんだ愛~ 麒麟 龍馬 @13711371

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