第8話 骨格標本4

 養鶏場に向かう車内で、さやかはラジオをつけた。

「10日ほど前から行方不明になっていた23歳男性の衣服とみられるものが東京都世田谷区のゴミ置場から見つかりました。」


「物騒な事件ね」

「そうですね」何事も無い会話であった。

「あと少しで着くわよ」

「先生宅から一時間ほどで着くんですね」

「そうなのよ以外と遠いのよ」ため息をつきながら言った。

 10分後に養鶏場についた二人は、受付を済ませ中へ入っていった。


「さやかさんとそのお弟子さんですね?」と社員の佐々木さんが聞いてきた。

「はいそうです。今日は宜しくお願いします」

 優人の目は、まるで工場見学にきた小学生のようだった。

 中に入ると、殺伐とした空気が流れていてここでは沢山の命が摘まれていると考えると心が痛んだ。

「ここでは鶏を、きれいに洗います」

「私たちは、仕事柄子供にお父さんの仕事は何? と聞かれても答えることができないんですよね。言ってしまうと子供がその事を周りに言うとそれを理由にいじめられたりしてしまうんですよね。」悲しげな表情で呟いていた。

「そうなんですか」

 作るからにはそういう現状も見てくれる人に伝えたいと思いながら頷くばかりだった。

 作業工程を、見終わりいよいよ肉になる工程まできた。

「ここでは、鶏を肉にします。首を切り落として

血抜きをする作業です」

 優人は、その光景を見て衝撃を受けた。その光景と同じようなものをいづれ見る事を、その時は知らなかった……。

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