「非日常」を8割は諦めているが、残りの2割を諦めきれない俺の「日常」

カラクリ屋敷49

プロローグ

「春」...一般的に言う出逢いと別れの季節だ 。その一般的に乗っ取ると俺は前者ということになるだろう。つまり、俺はこの春から新高校1年生としてこの道の先にある高校に入学するといったところだ。あまり、この高校に中学生時代の友達は入学していないが、校門に張り出されているクラス表を見て一喜一憂している顔も知らない女子たちを横目に俺は自分のクラスを確認する。


1年6組


そこに俺の名前はあった。見た限りでは同じ中学校の知り合いは池田くらいしかいなかった。まぁ、こいつは俺に初めてライトノベルを教えてくれた張本人であり悪いやつではない。むしろ仲は良い方だと思っている(俺の一方通行だと悲しいが...)。そんな、ことを思い、ふと周りを見渡すと1人の女の子が、地面を見つめていた。


よく、漫画やライトノベルにある「新しい出逢い」というやつに思いを馳せる、というわけではないが、やはりまだ自分は中学生と然程変わらない訳であり、その「新しい出逢い」に少なからず期待はしているのだ。それに、遠くからでも見て分かる。あそこにいる女の子は可愛い。ある意味チャンスなのではないか?と、そんな期待を胸に、俺は(おそらく)何かを探しているであろう女の子に話しかけてみた。そりゃ、俺だって男ですよ。下心の1つや2つあったっていいじゃないか。


「えーと、お前...大丈夫か?何か、探しているようだが...」


「...?」


少し驚いた表情でその女の子は振り向いた。

あー、はいはい。合ってますよ、その反応。誰だって初対面の、しかも入学するその日に男に話しかけられたら女の子はそんな反応しますよね。


「あっと...すまん、何か探しているみたいだったから。少し気になってだな...。」


あー、俺のバカバカ。もっと、他になんかあるでしょー。


「...こちらこそ、ごめんなさい。急に話しかけられて..。」


自己嫌悪している俺の気持ちを分かったのか目の前にいる、可憐な彼女はそう言った。


「いや、それはいいんだが...えっと、何か探しているのなら、手伝うが...」


そう俺が伝えると、彼女は少し考えてから申し訳なさそうに


「...私のクラスを探して欲しい...。」


俺は予想していた回答と少し違ったことに一瞬驚いたがすぐに...あぁ、彼女は身長が低くて、周りの人間が壁になりみえないんだな、と納得した。


「なるほど、ならまずお前の名前を教えてく

れ。」


「...ひとみ...駿河するがひとみ。」


名前に恥じない、綺麗な瞳を持つ女の子だった。彼女は眼鏡をかけていたが、眼鏡ごしからでもそれはよくわかった。


「オーケー、少し待っていてくれ。」


そう言うと俺は先程より空いた生徒玄関前に張り出されているクラス表を確認しに向かった。

結果を言うと、彼女も俺と同じ1年6組であり、個人的にはこれが期待していた願いになると信じて彼女、駿河 瞳にそれを伝えた。


「えーと、6組だったぞ。ちなみに俺も同じクラス。とりあえず、よろしくな。」


と、俺はさりげなく自分の宣伝(だから、いいじゃないか、ちょっとの下心くらい)をする。


「そう...よろしく...あと、ありがとう。」


そう言うと、瞳は校舎に向かって歩きだした。

ここで1つ、思い出したことがある。


「あ、名乗り忘れた。」


誰に言うわけでもなくそう呟くと、遠くから先ほど初めて俺にライトノベルという存在を教えてくれた池田の声が校舎の方向から聞こえた。



後に分かることだが、この駿河 瞳とのファーストコンタクトが俺の期待していた出逢いだったのだ。勿論そんなこと、今の俺は思ってすらいないんだが...。





なんて、伏線らしいセリフでも心の中で呟いておこうかなと思う。




















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「非日常」を8割は諦めているが、残りの2割を諦めきれない俺の「日常」 カラクリ屋敷49 @karakuri49

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