明日の僕らについて

@final-sumire

第1話 夜明けのルーティーン

葉介にとって眠れぬ夜が続いていた。

幼いころ、離婚する際に経済的な理由から母方の親戚の叔父夫婦に

引き取られて、離れ離れになった弟にそっくりなクラスメートに

気づいてしまったからだ。

彼の落とした生徒手帳を拾い、なんとなくラクガキでもあるのかと全ページをめくり、そこに書かれていた誕生日も血液型も一致していた。

『また、葉介兄貴はどこにいるんだろう?』という書き込みも

完全に決め手になってしまったのだった。

弟は勘が鈍いのか、全く葉介の存在には気づいていないようであった。

そもそも弟が腹膜炎によって入院している際に、矢継ぎ早に家族の分断は進んだので、

葉介の新しい苗字を知らぬのも無理はない。

時計の音が急かすように鳴り響いて、僕の心臓もテンポアップしていく。

なんで今更なんだろう。

何度も寝返りを打っても眠気はさよならしていて、

葉介は平面なグラビアアイドルを眺めたり、

立体的な猫のぬいぐるみを撫でてみたが、

悩みと迷いはどうにもならなかった。

彼の心の夜はいつまでたっても明けなかった。



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