第二章 はじまりの刻
現実の世界とはまた別の現世《うつしよ》。
草原の大地にぽつりと世界に残されたような小屋があった。
リビングにあるテーブルで三人は朝食を食べているときエルファーレは立ち上がり宣言する。
「私さ、旅に出ることにしたよ!」
バァンとテーブルを叩くエルファーレは少年と男を見下ろす。
「また唐突だね。どうしたの?」
食べ終わった食器を纏めて落ち着いた物腰の6歳位の少年が片付けながら少し呆れたように微笑む。
少年は何も応えない男に視線を向ける。
「オレか?…いいんじゃないかお前の好きにすれば。お前が居なくても別に寂しくない」
こちらの男は子供のように拗ねる。
「お父さんは素直じゃないね。お母さんはなんで旅に出ようと思ったの?」
少年は男をクスリッと笑いエルファーレに問いかける。
「ん、それは昨日私の心の中に入ってきた奴がいてなそいつから頼みごとをされたが内容までは聞いてないんだよ。だからそいつを探しに行く!きっと何ヵ月かは戻らなと思う。もし私が1年しても帰ってこなかったら探しに来てくれるか…?」
エルファーレは男を切なそうに見つめる。
「当たり前だろオレ達は家族だろ」
後ろからギュッと優しくエルファーレを抱き締める。
彼らがやっているのは偽りの家族ごっこだがエルファーレは満足していた。
青年とは結婚すらしてないし少年も自分の子供ですらない。
「…うん、じゃあ行ってくるよ!」
名残惜しく思う反面、頼みごとの内容が気になって仕方無かった。
外に出て空を見上げるとどこまでも続く青空は清んでいる。
家の方に振り返ると手を降っている少年と愛しそうにエルファーレを見つめている男。
自慢の腰まである金髪を一つに結び赤と青の双眸は決心を表していた。
旋律の刃 星野いおり @tansansui03
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