手書きPOPはハードルが高い!

 また間が空いてしまいましたね。申し訳ありません。


 先日あるマンガ家さんがサインなどを書店に配るなどの営業をかけてもいいものだろうか、という趣旨の質問をツイッターで投稿したことが一部で話題となりました。


 このあたりについては以前『作家さんご来訪!』などで軽く触れました。

 たとえば以前エッセイをアップされておられたわかつきひかる先生などは自ら営業努力するタイプだと公言していますし、昨今は自ら営業をかけることに積極的な作家さんもちらほら見受けられるようになったと感じています。


 私としては書店の担当者さんが出勤している時間帯を事前に確認しておけばそうそうお断りされることはないのではないか、と思っています。たとえば作家さんのサイン色紙などは、ある意味ではこれ以上ない貴重な「宣伝POP」となるからです。


 本日はこのPOPについて少しお話しましょう。

 ちょ、ちょっと話の持っていき方が強引とか言わない(笑い)



 POPとは、Point of purchase advertising――購買時点広告の略で、販売拡大のために設置されるさまざまなモノを指します(拡大販売材料、拡材とも呼ばれます)

 スーパーなどの小売店でほぼ確実に見られると思います。特に売り出したい商品の周辺に飾り付け、目立たさせることが狙いです。

 値段をどどんと大きく紙に書いてお得感を出したり、「今週のイチオシ! 続きが気になって眠れない!」といったような文章で購買意欲を刺激したり、目を引くイラストを配して注目を引いたり、というような利用法がありますね。


 さてこのPOPですが、出版社さんによっては定期的に送ってきてくださいますし、注文すれば取り寄せることもできます。

 また東野圭吾先生の新作小説など、特に注目度が高い書籍の発売前後に届けてくださることが多いです。また、一部出版社さんは書店向け公式サイトにてPOPに利用できる拡材を、お店の機器でコピーできるよう素材をダウンロードできるようにしてくださっているところもあります。


 出版社さんが準備してくださるものは、大型ポスターや、本の周辺に飛び出す形で張り出すハガキ大ほどのイラストや本の表紙を写したような形が主流ですね。そこには効果的に売り出すために考え出されたキャッチフレーズが添えられているのが一般的でしょう。



 しかしいかに出版社が用意してくださるとしてもすべてにそういったものが用意されているわけではありません。

 あんまりベタベタやりすぎるとくどくなりますし、また全部につけられてもPOPの山になってしまい使うことができないものも多々出てきてしまうでしょう。

 通常は特に売り上げが期待されているタイトルや、アニメ化などのメディアミックスがなされているものに用意されているのが普通です。


 そういったものがない商品でも書店側が薦めたい! これは是非売り上げを拡大させたい! と思える商品は次々と出てくるものです。そこで各々の書店さんが趣向を凝らしたPOPを「自作」するというわけです。


 気の利いたフレーズをデカデカと目立たせたり、感想をつらつらと書き綴ったりとか。たとえば絵心のある方なんかはイラストなんかをちゃちゃっと添えたり。そういった書店員さんならではの「手書きPOP」はその従業員さん、ひいてはお店ならではの色が出ますよね。それを眺めているだけでも軽く時間が潰れたりするものです。



 さて書店で文庫担当となった私ですが、コミック担当者さんや、前任の文庫担当者さんがそういった手書きPOPを多用する方だったため、私も追随せざるを得なくなりました。


 いや、嫌だというわけではないのですけど、これがすごく恥ずかしいのですよ。


 だって不特定多数のお客様に自分の書いた字や文章をダイレクトに見られちゃうわけですよ。しかもそれが売り上げに左右されちゃうわけですよ奥さん。恥ずかしさとプレッシャーの極みじゃないですか!(笑)



 

 すごく恥ずかしいけど……これをもっと売らなきゃ…… 

 だからもっと私を! 私のを見てぇぇぇ!



 

 みたいな大胆さがあればよかったのですけれど、終始これにはどうしても慣れなかったです。あ、それはただの露出狂ですか、そうですかじゃあ慣れなくてよかったですね。



 ……ゴホン。


 店長からも、手書きの方が味が出るから、ということでパソコンでちゃちゃっと作る簡単さを覚えてしまうよりも、最初は手書きしてみるのを薦められたというのもあり、稚拙ながらもいくつか実際に書いたりしました。


 特に閉店が本決まりになり、補充注文も止めざるを得なくなった状態では、それくらいしかやることがなかったという悲しい事情もあるのですけど……(ボソリ


 たとえばカラーマジックを使って、POPごとに文字の色を変えたり、強調したいところにはアンダーラインを引いたり太文字の赤色で強調したり。タイトルロゴを手書きで模してみたりとか。

 旬がすぎ使わなくなったPOPの厚紙を裏返して書いてみると意外とそんなことだけで見栄えが良くなったりします。前任の方が使わなくなったPOPとかを取っておいてくれたため、幸いこのあたりの材料に困ることはなかったです。


 たとえば本のかたわらに添えられる小さな飛び出し型のPOPでは、自分で推薦文といいますか売り文句を考えなければならなかったのが大変でした。

 どういうところを強調すればお客様は買ってくださるだろうか、というアピールポイントなどを考え、きちんとした文章にするために何度か書き直したり下書きしたりで、やりはじめると1日、中には数日を要するものもありましたね。


 たとえば『ノーゲーム・ノーライフ』はアニメ化からしばらく経過し、新刊のリリースもなかった時期があったのですが、その間でも入荷すれば即売れる、といった人気ぶりが継続していました。

 その実際に売れている、というアピールは販売を一層拡大する上で効果的だなということで「アニメ化が終わっても止まらぬ人気!」というところを強調したPOPを書いたことはよく覚えています。

 そうして文章を考えた上でPOPを付けた結果、その本が売れた時、とても嬉しかったです。



 どうか書店でお買い物をなさっている時に手書きPOPを目にした時、どうか書店員さんのがんばりといいますか、めちゃめちゃ恥ずかしい思いもしながらも精一杯知恵を絞って拡販しようとしているんだなあ、と心に留めておいてくださるとそれを作った方も少し報われるのではないかと思います(笑)


 書店のカラーは手書きPOPでうかがい知れる。ここの気合の入れ方で店舗の本気度も測れるので、そこに力を入れている書店様の推す本を信じてみる、という評価の尺度にしてみるのもよいかもしれません。手書きで薦めているものは、思わぬ掘り出し物だったりするかもしれませんよ。


 その本気度が伝わるほどに私の作ったPOPが効果的だったかどうかは今となってはわかりませんが、それが巡り巡ってカクヨムさんでレビューを書く時のスキルに寄与していることを考えると、ああ人生にムダなことはないんだなあ、などとやや大げさながらにも感じますね(笑)



 その他、たとえば『俺ガイル』の時が顕著だったのですけど、1期の時に配布されたかわいらしいイラストPOPを、放送時間だけ切り取ったり隠したりして使いまわしたり、『Newtype』だとか『メガミマガジン』などのアニメ誌についているポスターをラミネート加工したものを上から新刊の発売日だけ張り替えたり。既存のものを使いまわす、ということも戦略としてきわめて重要でした。


 その他私がよくやった手法として、カドカワさんが毎月送ってくださる書店さん向けの新刊発売予定が書かれた紙を切り取りまして台紙に貼り付け、小型POP化したりしました。あれイラストと共に紹介文も付いてるのでめちゃめちゃ使いやすかったのです……本来の用法とは違うのかもしれません、カドカワさんすみません(汗) 



 さて。このへんにしましょうか。


 今回は書店員さんの作業工程というか小技のようなものを久しぶりに書けた気がして個人的には満足しております(笑)


 こんな自己満足感、自己完結感の強いエッセイではありますけれど、引き続きご覧いただけましたらありがたく思います……!

 それでは、露出した罪でおまわりさんに手錠をかけられない限りは、またお会いしましょう。

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