二人三脚という言葉に意味深な要素はありません

 おはようございます。昨日は頭痛がしたので早いうちに寝まして。だいたい5時くらいに起きたんですけど、いやあすごく頭がスッキリしますね。

 


 本日はコミックを担当しておられた方のお話をさせていただこうと思います。

 

 書店員の朝は、開店前に新刊の納品を品出しするところからはじまります。

 雑誌や書籍などいくつか分類がありますが、基本的には雑誌が最優先で、次いでコミック、書籍文庫の順で展開していくところがほとんどだと思います。

 私は文庫担当ではありましたが、基本的に新刊だけパパッと出しちゃったら、コミックのお手伝いをすることも多かったです。

 コミック担当の方は土日お休みなので、土曜にコミックの入荷があれば代わりに陳列しておりましたが、その場合準備は自分の文庫よりも優先されます。


 上記の事情から、文庫担当の私であっても、コミックに触る機会というのは非常に多かったです。

 日によってはコミックの品出しをしている時間の方が長かったなんて場合も。

 

 私が文庫担当になってからは朝から入らせていただく機会が非常に増えたのですが、その際ほぼ毎日一緒にお仕事することになったのがコミック担当者の女性です。

 既婚者で、旦那さんはジョジョ好きの方でした。

 

 基本的に朝出勤したら店長とコミック担当の女性、そして私の3人が納品された商品を段ボールなどの梱包から開けていきます。

 その後店長はお得意先への雑誌の配達に行っていたので、そこからは基本的にその女性と2人でお仕事を進めていくという流れがしばらく続きました。

 コミック担当の方は毎日の家事がありますから基本的にお昼までであがりでして。私がそこから午後まで残る場合、前にお話させていただいたようなワンオペになることもあった、というわけです。

 

 もっとも、閉店が近くなったら私の出勤が午後からのみに削られ、コミック担当の方とお会いするのは引き継ぎの一瞬だけ、という状況となりましたけど――今回はそのコミック担当者さんと一緒の時間にお仕事させていただいてた間のお話となります。



 何年も勤めておられるベテランさんでしたので、私なんかは完全にお世話になりっぱなしで。何かあるごとに助け船を出してもらっていました。

 私が担当を持って、曲がりなりにも仕事をこなすことができたのは、この方の有形無形のご助力なしには考えられません。


 たとえば私がカドカワさんやS潮社さんなど、出版社さんが毎月送って下さるチェックリストを見ながら棚整理をする時などは、レジを見て下さっていたり。


 もちろん逆に、コミックの棚を並び替えたりなどでその方が長い時間レジを離れなければいけないときは私がレジでできる作業を、という感じでローテーションを組みながら日々のお仕事をさせていただいていました。


 コミック担当者さんとの二人三脚ですね。


 

 そのような日々の業務以外にも、コミック担当者さんとの連携は非常に重要でした。

 それは何故かと言いますと、フェアなどの展開では両者の協力が必要不可欠であったからです。

 

 ライトノベルの場合、人気のある作品はコミカライズ、漫画としても発売されることが多いです。

 そのため、アニメ化などの商品を平積み、面陳(表紙を見せてずらりと並べ目立たせる方法)などで強く展開する場合、コミックとライトノベルをセットにしなければ効果的とはいえないでしょう。


 特にカドカワさんは、現在の、小説などのメディアをコミカライズし、そこからアニメ化し、原作とコミック双方で仕掛ける、いわゆる「メディアミックス」のひな形を作ったようなところですからね。

 アニメ化する作品となればまずコミックも出しているのが普通です。

 なのでコミックのアニメ化コーナーにもおじゃまさせていただき、原作ライトノベルも置かせていただくというのがいつものやり方でしたね。

 

 今で言うなら『ネトゲ嫁』とか『Re:ゼロ』のコミカライズとかがその例でしょうかね。私は『ネトゲ嫁』原作のHisasi絵も好きですけれどマンガの石神一威先生も同じくらい好きですよ。

 


 私のいた頃で特徴的だった、ライトノベルとコミカライズの展開例をいくつか取り上げてみましょうか。

 

 まずは『俺がお嬢様の「庶民サンプル」として拉致られた件』、通称『庶民サンプル』です。来月発売される11巻で完結するらしいですね。

 これはI迅社さんのラノベレーベル初のアニメ化作品なのですが、これに関してはりすまい氏のコミカライズが長期連載となっており、こちらが元々相当売れておりました。

 

 続いて『GATE 自衛隊 彼の地で、斯く戦えり』。

 こちらは原作ライトノベル発売元のアルファポリスさんが自らコミカライズも出版なさっております。元々はあまり取引のなかった版元さんだったのですが、アニメ化前に注文し置かせていただいたコミックが、これまた非常に動きました。

 原作文庫と合わせて買っていかれる方も見受けられました。


 

 そして『冴えない彼女ヒロインの育てかた』も取り上げないわけにはいかないでしょう。

 べ、別に編集長さんに媚びてるわけじゃないんだからねっ!

 

 ……ゴホホン。

 そんなリスクを背負ってまでこれを取り上げる理由は、そのコミカライズパターンの多さにあります。

 

 まずは原作に準拠した『ドラゴンエイジ』連載でのコミカライズ。

 そのほかに『ヤングエース』で連載された『〜egoistic-lily〜』に、『ビッグガンガン』の『恋するメトロノーム』。合計3作ものコミックが存在するのです。

 

 コミカライズそのものは昨今珍しいものでもなんでもなくなっていますが、通常は1作品あたり本編準拠の1作がコミカライズされれば上々というのがふつうです。

 3作、しかもアニメ前からぶっ込んでくるというのはよほどの力の入れようなのだとしか言いようがありません。

 

 なお、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』は外伝やちょぼらうにょぽみ氏のシュールなアレを入れて4作、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』も4コマ含めて3作展開されてたりと、コミカライズが複数あるというのは『冴えカノ』だけの専売特許というわけでもありませんけどね。 



 色々書きましたが、要はコミック担当者との緊密な連携なしにはライトノベルの売り上げ向上はありえなかったということですね。

 私がライトノベル担当者としてお仕事できたのも、コミック担当者さんのご尽力があったからこそ。この方にも感謝してもし足りないほどにお世話になりましたね。

 この場を借りまして、御礼を。ありがとうございました。

 

 ――さて。今回はここまでといたしましょう。

 それでは、例によってほうぼうからお叱りの声をいただかない限りはまたお会いいたしましょう。

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