「取次」と返品率の話(後編)

 でも当然、返品システムがあるといっても出版社さんが用意できる本の部数にも限界があります。本を出すにもお金がかかりますからね。

 在庫管理のための費用もあることでしょう。

 そのためすべての書店に同じだけドカドカと流すわけにもいきません。そこで重要な基準となるのが「返品率」と呼ばれる数字です。


 出版社さんの立場で考えると、たくさん書店に送ったのに「ああ売れなかった、じゃあいっぱい返品しよ」とばかりに大量に返されてしまったのなら、次からは当然「ああここはそんなにいらないんだなあ。じゃあ次から全体的に減らそ」といった具合に入荷を減らすことが考えられます。

 というか基本どこもそういう風にシビアに見ます。

 

 入荷に対しどれだけ返品をしたか。「返品制度」を考えたときここがもっとも重要となるわけです。


 お金も返ってきますし、本を仕入れて返すだけなら簡単なんですが、あんまりメチャクチャやってると次からガッツリと減らされたり、最悪その出版社から完全に切られてそこのメーカー全体の商品が入らなくなったりしてしまう。

 特に新刊をすぐに返すと減らされます。最悪一か月程度在庫持たなければなりません。

 なので「返品制度」があるとはいえ、やはりある程度きちんと本の数を管理しなければなりません。



「じゃあ極力返品しなきゃいいんだな、売れる本を売れるだけの数を用意すればいいんだな」

 ――という話になりそうなんですが、ここが前任者から引き継ぎでもっとも難しいところで。


 新刊や売れる本を仕入れるために、返本した時に得られるお金を利用しなければとても追いつかない。

 そのため一か月ごとにある程度計画して、出版社さんや取次さんから目を付けられない範囲で一定以上の返本を出してお金に換えなければなりませんでした。

 悪い言い方をしてしまえば、入荷と返本の自転車操業ですね。


 

 箇条書きにしましょう。


・本はいっぱい仕入れなきゃならない

 ↓

・でも返本すると次から減らされる

 ↓

・でもお金に換えるためそのたび返本はある程度出さなきゃいけない

 ↓

・じゃあ何を返すんだよ!


 

 はい。これです。

 返本したら当然お店の在庫が減ります。

 売り場にある本の数が減るのですから、ヘタすると「ああなんだここ、全然揃ってないじゃん」ってなりかねません。

 いっぱい在庫があるように――またライトノベルならばシリーズものが巻数の欠落なくきちんと揃っているように見せつつ、そこそこの量返本しなければならない。 


 返本するとなれば、発売から1か月以上経過した準新刊の余り物と、既存の本ということになるのですが、何を返したらいいのか、また何を残すべきなのか。

 これを絞るのが非常に難しく、毎日のように悩んだのを覚えています。


 

 ……だってどれも置いとけば売れるように見えるんだもん!



 逆を言えばパッと見ではどれが売れるタイトルで、どれがそうでないのか差が非常にわかりにくいのがライトノベルでした。どれも絵がキレイですしね。

 

 深崎暮人先生サイッコォォォォゥ!

 ……アカウント間違えました。

 

 ……ともあれ、前任の方は一般文芸寄りの方でライトノベルをお読みにならない方でしたから、なおのことよくわからなかったそうです。

 なんでこれが売れてるの? みたいなことをよく尋ねられてましたね(苦笑)


 一応出版社さんが在庫チェックのための表を毎月送ってくれるんですけどね。

 ライトノベルコーナーもあるにはありましたが、おすすめの本をすべて置けるほど広くはなかったのです。結局、自分の感覚で取捨選択していくしかありません。

 毎月毎月、今回はこれを入れてこれを削って……というようなことを考えていました。


 ……専門的な話ばかりになってしまってなかなかネタに移れませんでしたね。

 申し訳ありません。

 次こそ楽しい話を書くぞい! ……書くぞい。

 それでは例によって怒られなければ、また次の機会にお会いいたしましょう。

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