「取次」と返品率の話(前編)

 前回の投稿で予想以上の反響をいただきましてありがとうございます。

 素敵なレビューもいただけまして感無量です。こちらでも改めて御礼申し上げます。


 さて今回は前任者からの引き継ぎの中で、重要な要素であった「返品率」についてお話させていただきたいと思います。

 ちょっと専門的になりすぎているかもしれません……うまく説明できているといいのですが……

 ※長くなりすぎたので分割しました。



 書店は出版社さんから本を仕入れる際、通常は「取次」と呼ばれる業者さんを挟みます。この「取次」さんが注文を受けた本を必要分だけそれぞれの書店に分配しているのです。

 書店であるなら例外なくどこかの「取次」さんと契約していると思われます。大半の書店さんは「トーハン」さんか「日販」さんの大手二大取次でしょう。


 普段けしてそんなことを意識されることはないかと思いますが、この「取次」さんが注文と納品を一括して代行するシステムネットワークを日本の津々浦々に構築していることが、コミックや小説、雑誌の全国的普及を可能にしている重要な要素なのです。

 日本の文化を陰で支えている功労者様方といっても過言ではないでしょう。


 この書店と出版社の橋渡しを行ってくださる「取次」さんですが、こことの取引でもっとも重要なポイントは、「返品制度」です。

 

 書店さんの立場で考えると、売れる本を仕入れようと思ってもそれには当然、お金がかかります。

 それが必ず売れてくれるならいいですけど、一日で発売される新刊の数は想像を絶する数なので、どれだけ売れるか完璧に予測するのははっきり言って不可能です。

 どんなに「これは売れる!」と思ったものでもすべてさばけるとは限らない。ヘタをすれば1冊も売れないなんてこともありえます。

 本の仕入れには常にリスクが付きまとうのです。

 

 ですが、「売れなくても返品すればお金も返しますよ」という制度があるので、最悪売れなかったら返せばいい。

 そのおかげで、書店さんはある程度リスクを抑えながら大量に商品を入荷することができるのです。


 じゃなかったら新刊を大量に仕入れてドカンと平積みなんて、売れなかった時のことを考えると怖くて怖くてできません。

 ア○メイトとかの陳列量、そしていわゆる「メロン積み」みたいな積み方なんてそれこそ狂気の沙汰です(笑)

 

 ……ゴホン。ともあれ。

 このシステムこそ日本の出版文化を支える根本部分なのです。

 まぁそれもAmazonさんの登場で大きく崩れつつあるのですが、それはまた機会があったときにでも……

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