パーフェクト・ブルー

Nozoomi

パーフェクト・ブルー

   宮部みゆきのデビュー刊行単行本、パーフェクト・ブルー。私自身もデビュー以来の熱心な宮部ファンだ。と言うわけで、まずは彼女の読了エッセイを書いてみたいと思う。


   高校野球界のスターと嘱望されるピッチャーが焼き殺された。犯人は元チームメイト、体調不良が原因で野球を断念せざるを得なかった彼の筋違いな妬み、そねみが動機なのだが、その彼も自殺体で見つかった。この事件を不思議に思うピッチャーの弟諸岡進也とともに探偵事務所の若き女性調査員、加代子とその飼い犬で元警察犬のマサが真相を追い求める。

   そして事件は思わぬ展開をしていく。ある製薬会社がまったく新しいタイプの筋肉増強剤と同時にドーピング検査薬を開発し、それらの試薬をスポーツドリンクなどに混ぜ、少年野球の子供たちに摂取させ投薬実験を行っていた。そのドーピング検査薬には副作用があり、元チームメイトはその犠牲者だった。ピッチャーと元チームメイトは協力をして、事実解明を望んでいた。隠蔽工作を謀る製薬会社と、進也、加代子、マサは対決し事件の全貌が明らかにされる。


   宮部みゆきの小説には、少年が主人公となるものが少なくない。陰惨な事件を題材にしがらも、少年のナイーブな視点や正義漢あふれる行動が、読後感を爽やかなものにしてくれる。本書では諸岡進也もそうだが、犬のマサの存在が大きい。続編としてマサが活躍する短編集「心とろかすような―マサの事件簿」もあるが、こちらのほうも内容は覚えてないのがつくづく情けない。

   ところで、筋肉増強剤や薬物に汚染されるスポーツ選手は近年ますます多くなっている。また偽装問題が相次ぎ、企業の危機管理能力や法令遵守の姿勢が厳しく問われる現在、企業の隠蔽工作はもっとも今日的な問題と言っていい。今現在も、宮部みゆき、いや「パーフェクト・ブルー」は古びない。

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