11 カオリ
五時になって美嘉ちゃんと一緒に店を出た。
一度家に帰ってシャワーして軽く食べて。メイクする。
ミュールの爪先にネイルを通してミニのシートに座った。
美嘉ちゃんのマンションに着いて電話すると、まだ髪の途中だから上がって来てって言われて部屋に入った。美嘉ちゃんは同居人の元ヘアスタイリスト、現在無職、の男の人にブレイズを編み直してもらっていた。
何をしているかわからない同居人とは初対面だった。お互いに「彼氏な訳ない」「付き合ってない」と言い合っていた。
JRの高架沿いに車をとめたのは二一時過ぎだった。
「まだ入ってない。てか目の前だけど」
車を降りて歩いている間にジュンから電話があった。
『三十分で行くわ』
「上で待ってるね」
美嘉ちゃんと人混みの階段を進んで。二階のバーにたどり着いて飲み物をもらって、スツールに腰掛けて話したり、知らない子に話しかけられたり、一階のステージの方を見下ろしたり。
バーのカウンターに戻ると美嘉ちゃんがバイザーを着けた男の子と話していた。
隣に座っても美嘉ちゃんの声が聞こえないくらいにクラブの中は話し声とスピーカーから溢れる音が流れ続けてる。
バイザーの男の子が「ミナ」って言った気がした。
美嘉ちゃんの向こうの男の子。バイザーに隠れて顔が見えないけれど、知り合いかな。美嘉ちゃんはずっと話し掛けられるのがウザそうだった。
バイザーの男の子が「煙草わけて」って言うのが聞こえて美嘉ちゃんを見ると、こっちを向いて苦笑いをしていた。
「飲み物を買ってくれたらあげるよ」
男の子と目が合ってそう言った。
「財布がロッカーの中だで、待っとって」
バイザーの男の子がいなくなってから、また音楽で埋まったカウンターに並んで美嘉ちゃんと話していた。
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