屋根の上で

今残って屋根の上に寝転んだりは……しないよね。

気持ちいいのにな……。

簡単に言えばベランダに干されている布団みたいに。


「おねーちゃん、何してるの?」

私の弟、瑞樹が言う。


実を言うと、瑞樹は高所恐怖症だ。家の二回から下を見るのもだめらしい。

「来てみる?暖かいよ?」

「ううん、高いところはやだ。」

「そうか……。」

やっぱりね。

「そういえば母ちゃんがご飯だって。」

「え?」

「さっさと来なかったらぬくよって。」

「え~?」


「ごちそうさまです。」

瑞樹はさっさと食べ終えてリビングから出ていく。

「あいつ、どこにいくんだ?」

父が言う。

「宿題があるんじゃない?」

母が答える。

「ごちそうさま。」

私も部屋を出る。


「あれ?瑞樹は?」

部屋に行っても瑞樹がいない。

トイレにも、別の部屋にも。

すると残るのは……。


屋根の上、か……。


案の定、そこには瑞樹がいた。

私と同じように寝転んでいる。

「ちょっと来てみた。」

弟が言う、そして私も言う。

「よかったじゃん。」

最後に弟が一言。

「ここから降ろして。」


やはり高所恐怖症克服の道は厳しい。

でも、ね……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

すぐ読める 「小説冒頭。」 灯室 焔 @homurohomura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ