「殺したのは私です」「いや、俺だ」「いやいや、私……」 殺人事件の犯人として三人の人物が自首をしてくる。そこで、前の二人が、「どうぞどうぞ」とはならないのだが。 倒叙ものなので、読者には真犯人が語り手の主人公だと分かっている。「どうしてわざわざ殺人犯になりたがるのか」がテーマのホワイダニット(なぜそうしたのか)ものだ。 短い中に小気味のよい文体で、すらすらと読ませてくれた。