特別編-End of Winter in 2021-

3月1日(月)

特別編-End of Winter in 2021-




 バレンタインデー後も、僕は家で漫画やラノベ、アニメを楽しんだり、バイトに勤しんだりする日々を送っている。

 また、栞も僕も好きなアーティストの配信生ライブを、僕の家で栞と一緒に鑑賞した。好きな曲や知っている曲がたくさん披露されたのでかなり楽しかった。

 年度末休みの間に、配信ライブやアニメイベントを鑑賞する予定だ。コロナ禍で卒業旅行の予定は今のところないけど、これで少しは学生生活最後の長期休暇の思い出を作れればいいなと思っている。



 そして、学生生活最後の冬が終わり、今年も春がやってきた。 



『もう3月なんだね~』

「そうだね、栞」


 夕方。パソコンのツールを使って、今日も栞とテレビ通話をしている。

 以前は、通話はスマートフォンで行い、たまにSNSアプリを使ってテレビ通話をする程度だった。ただ、去年の春頃に新型コロナの感染拡大し、一時期は緊急事態宣言も発令された。その時期に、ゼミの進捗報告会をオンライン上で行うように。そのためにパソコンにツールを入れたのを機に、プライベートで栞と話すときもパソコンを使うことが増えたのだ。


『年度末のお休みが始まってからもう1ヶ月が経つんだね。あっという間』

「そうだね。大学も休みで、ゆっくりと過ごすのが楽しいからかな」

『楽しい時間ほど早く過ぎるって言うもんね。それに、このお休みが終わったら、お互いに社会人。さすがに2ヶ月なんていう長い休みは取れないよね』

「そうだよね」


 2ヶ月はおろか、1ヶ月も休むことはできないだろう。

 ちなみに、うちの親も月単位で休んだことはない。夏休みや一昨年の改元の際に10日間くらい休んだのが最長だと思う。あと、曜日の関係で年末年始も同じくらいの期間休んでいたか。

 あと、僕を産んだとき、母親が産休と育休、父親も育休で長く休んだのだそうだ。将来、栞と僕もそういう休みをいただくことになるのかな……。


『悠介君、どうしたの? 顔が赤いし、口元が緩んでいるし』

「ちょ、ちょっと考え事をしていただけさ。あと、今日も晴れているから、部屋の中が暖かいんだ」

『そうだったんだ。良かった。最近は晴れている日は暖かいって思える日が多くなったよね。今日から春になるだけあるね』

「ああ」


 冬も好きだけど、段々と暖かい気候になっていく春も好きだ。一番好きな季節だと言ってもいいくらい。なぜなら、春は栞と出会い、恋人になった季節だから。あれからもう7年経つのか。


『今度は優しい笑顔になってる』

「今年も、栞と出会って恋人になった季節が来たなと思って」

『そうだね』


 栞も優しい笑顔になり、マグカップに入っている紅茶を飲む。


『高校に入学した直後だから……7年近く経つんだ』

「7年か。高校に入学した直後からだと考えると、とても長い期間付き合ってきたんだなって思うよ」

『そうだねぇ。義務教育を終えたばかりに付き合い始めた私達も、あと1ヶ月で社会人だもんね』

「……この7年がもっと長く思えてきたよ」

『ふふっ』


 振り返ってみると……色々なことがあった7年間だったな。僕らの場合は高校・大学時代と重なる。栞がいなかったら、ここまで楽しい7年間にはならなかったと思う。

 今から7年後は……30歳になる年か。その頃、栞と僕はどうしているだろう。同棲しているだろうか。結婚しているだろうか。子供がいるだろうか。どんな未来でも栞と一緒に笑い合えていたらいいな。


『話は戻るけど、あと1ヶ月で社会人だよ。それまでに悠介君との思い出を一つでも多く作りたいな。コロナもあってできないことが多いけど』

「卒業旅行も今のところは未定だからね。お花見の宴会とかもしないでくれとも言っているし」

『だよね。今年も3月中に開花予定だから、咲いたら桜の綺麗な並木道を一緒に歩きたいな。うちの方にあるんだよ』

「そうなんだ。確かに、そのくらいのことはしたいよね」

『そう言ってくれて嬉しい。じゃあ、咲いたら桜が綺麗なところを歩こうか』

「ああ、そうしよう」


 社会人になるまであと1ヶ月。新型コロナの影響でできないことも多いけど、栞と一緒に学生生活最後の思い出を作っていければいいなと思う。




特別編-End of Winter in 2021- おわり

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