1月1日(金・祝)

『紅組が優勝しました!』


 2020年の紅白歌合戦は紅組が優勝した。今年の紅白もとても良かったな。あっという間の4時間だった。


「今年は紅組が優勝したよ! 悠介君!」

「ああ。じゃあ、初詣の帰りに買った甘酒の代金を払うよ」

「えへへっ、嬉しいなぁ」


 栞は嬉しそうな笑みを浮かべている。応援していた紅組が勝ったのがよほど嬉しかったようだ。紅白を観ているときにカクテルやサワーを呑んで、ほろ酔い状態になっているのも一因かもしれない。そんな栞が可愛くて彼女の頭を撫でる。すると、そのことでさらに嬉しそうな笑みに。

 僕は財布を取り出して、甘酒の代金の130円を栞に渡した。


「はい、130円だよ」

「……確かに受け取りました、悠介君。明日になったら、この130円を使って甘酒を買った自販機で何か買おうかな」

「いいんじゃないかな」


 そのとき、僕は2021年初めての缶コーヒーでも買おうかな。


「2020年ももうすぐ終わりだね、悠介君」

「あっという間だったなぁ」


 気付けば、2021年まであと3分を切っていた。テレビを観ていると、右下に2020年までのカウントダウンが表示されている。

 就職活動や卒業論文があったから、2020年は色々なことがあった1年だと思える。でも、それらがなかったら、コロナ一色の印象になっていたと思う。


「悠介君、今年もお世話になりましたぁ。来年もよろしくお願いします」

「うん。こちらこそお世話になりました。来年もよろしくお願いします」


 僕と栞は1年の挨拶を済ませて、互いに頭を下げる。すると、栞は不意打ちにキスをしてきた。きっと、これが2020年ラストのキスになると思う。

 それからは一緒にテレビを観ながら、2021年を迎える瞬間を待つ。


『2021年まで……3、2、1!』


『Happy New Year!! 2021年あけましておめでとうございます!』


「あけましておめでとう! 悠介君!」

「おめでとう、栞」


 無事に2021年を栞と一緒に迎えることができた。コロナもあって、一緒に新年を迎えられない可能性があったので、今、隣に栞がいることに幸せを感じる。

 2021年になって最初に栞と目を合わせると、栞はニッコリと笑みを浮かべてキスをしてきた。


「今年もよろしくね、悠介君」

「うん。よろしく、栞」


 2020年になったときにも、同じようなことをした気がする。毎年変わらず栞と一緒に新年を迎えることができるのは嬉しいことだ。

 きっと、1年経った2022年になったときも、僕らは同じようなことをするような気がする。社会人だけど、年末年始なのでこうして一緒にいられるだろう……たぶん。


「2021年の初キス、美味しくいただきました」

「それは良かった。栞からはとても甘い匂いがしたよ」

「カクテルとかサワーをたくさん呑んだからねぇ」


 えへへ~、と栞は笑い、俺の腕をぎゅっと抱きしめている。

 栞は酔っ払っているけど、僕はお酒の他にコーヒーも呑んだのでそこまで酔っていない。


「ねえ、悠介君」

「うん?」

「今年もさ、最初のお風呂は悠介君と一緒に入りたい。どうかな?」

「もちろんいいよ。ただ、僕はいいけど、栞はまだ酔いが残っているように見えるよ。お風呂に入って大丈夫か?」

「悠介君が一緒だから大丈夫だよぉ」


 楽しげにそう言うと、栞は抱きしめている僕の右腕に頭をスリスリしてくる。何だか子供っぽくて可愛いな。これでも、今年社会人を迎える22歳です。


「分かったよ。じゃあ、一緒に入ろっか。もし、気分が悪くなったら、すぐに僕に言ってね」

「うん! じゃあ、一緒にお風呂に入って、一緒に寝よう!」

「ああ、分かったよ」

 

 今年……2021年は学生生活が終わり、社会人生活が始まる。特に社会人になってからは大変だろうけど、栞も頑張っていると思えば僕も頑張れそうだ。

 その後、両親がお風呂に入っていないことを確認し、僕は栞と一緒に2021年最初のお風呂に入った。

 酔いが残っているからか、栞は終始楽しそうで。そんな彼女は、湯船に浸かっても気分が悪くなることはなかった。


「はぁ、お風呂気持ち良かったよ。今年は新型コロナがあったから、いつもと同じような年越しの時間を過ごせて幸せだよ。初詣は2020年のうちに行ったけど」

「そうだな。でも、一緒に初詣に行けて良かった。当たり前のことが実は幸せだって分かるよね。それを忘れなければ、いい1年になるんじゃないかな」

「私もそう思う。お風呂に入ったら眠くなってきちゃった。新しい年を迎えたし、悠介君のことをぎゅーって抱きしめて寝たいなぁ」

「もちろんさ」

「ありがとう」


 お礼を言うと、栞は僕の頬にキスをしてきた。これが2021年初の頬へのキスだった。

 その後、僕は栞と一緒に自分の部屋に戻り、ベッドの中に入る。

 すると、栞は俺の腕をぎゅっと抱きしめてきて。そのおかげもあって、栞の温もりや柔らかさ、シャンプーやボディーソープの甘い匂いがたっぷりと感じられた。


「悠介君、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」


 俺から新年初のおやすみのキスをすると、栞はゆっくりと目を閉じる。そこから10秒もしないうちに可愛らしい寝息が聞こえてきて。さっそく夢を見ているのかな。

 紅白を見ているときにお酒を呑んでいたのもあってか、僕も程なくして眠りにつくのであった。




特別編-Year End and New Year of 2020~2021- おわり




□後書き□

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