12月31日(木)-後編-
2021年分の初詣から帰ってきてからは、僕の両親と年越しそばとお寿司を食べるとき以外は、基本的に僕の部屋で2人きりでゆっくりしている。
「2020年もお世話になりました! 悠介君」
「うん。こちらこそお世話になりました、栞」
紅白を観る前に、こうして栞と1年の締めくくりの挨拶をすることも恒例になったな。
今年は就職活動があったり、卒業論文があったり。それだけなら、お互いに就職先が速く決まったし、ゼミも同じなので会える時間は多いと思っていた。
しかし、新型コロナウイルスが流行したため、去年よりも栞と会う時間が減ってしまった。だからこそ、今のように一緒にいられる時間が、今まで以上に愛おしく感じられる1年でもあった。
「悠介君、今年はどんな1年だった?」
「今年は色々あった1年だったよ。就活や卒論はもちろんのこと、新型コロナもあったからさ。就職活動が無事に終わって、卒業論文の執筆も順調に進んでいるのが幸いかな」
「そうだね。就職活動が厳しい友達もいるし、本当に運がいいんだなって思ったよ」
「採用を見合わせる会社もあったもんね」
そんな中で、季節が春のうちに就職先が決まったことはとても幸運だったのだと思う。そのおかげで夏以降は卒業論文とバイトに集中できたし。
「来年はちゃんと卒業して、4月からは働かないとね」
「そうだな。社会人生活かぁ。4月以降は新しい生活が待っているんだなぁ」
そう思うと、今からちょっと緊張してくる。
ただ、学生生活もあと3ヶ月残っている。学生のうちに栞との思い出を一つでも多く作りたいなと思っている。
あと、来年の夏に延期した開催される東京オリンピックとパラリンピックは、栞と一緒にテレビでゆっくり見たいなと思う。
「悠介君。話は変わるけれど、今年の紅白はどっちが勝つかな?」
「そうだなぁ……今年も白組が勝つって思ってる。今日で活動休止をするアイドルグループとか、ひさしぶりに出場するロックバンドもいるからね。紅組にも気になる出場歌手はいるんだけどね」
「そっか。ここ何年かは紅組が負け続けているけど、今年はちゃんと勝つんじゃないかなって思ってるよ。紅組には、大ヒットしたアニメ映画の主題歌を歌う人とか、チャート年間1位の曲を歌うユニットもいるからね!」
栞は勇ましい表情を浮かべながら、僕のことを見てくる。
栞の言う通り、ここ何年かは栞の言うように白組が勝つことが多い。ただ、紅組の歌手が歌う曲には、今年大ヒットした曲がいくつもあるからなぁ。でも、去年までの勢いのまま、今年も白組が勝つだろう、きっと。
「悠介君。それでも笑みを浮かべているね」
「白が勝つって思っているからね」
「分かった! 今年こそ紅組が勝つように応援しないと! 初詣の帰りに買った甘酒の代金がかかっているからね!」
130円だけど、お金がかかっているからか栞は気合い十分だな。
勝敗も大事だけど、まずは紅白そのものを栞と一緒に楽しむことができればいいなと思う。
やがて、紅白が始まる。僕は栞の隣でコーヒーやカクテル、サワーを飲みながらのんびりと観るのであった。
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