3月14日(木)
特別編-The White day in 2019-
3月になると、寒さの和らぐ日が多くなっていく。
しかし、季節の変わり目ということもあってか、定期的に雨が降るので個人的には微妙な時期だ。
また、今年は晴れている日を中心に鼻水が出やすくなったり、目が潤んだりと、花粉症かもしれない症状が出始めた。いよいよ、僕も花粉症の方々の仲間入りを果たすことになるかもしれない。
今日も朝から晴れて、陽差しの温もりが感じられる穏やかな一日だ。ホワイトデーにいいんじゃないだろうか。
バレンタインデーにチョコレートをプレゼントしてくれた栞へのお返しとして、手作りのスイーツを栞と一緒に食べるのがホワイトデーのお決まりとなっている。大学ももちろんお休みなので、昼過ぎから栞が僕の家に遊びに来ていた。
「栞、そろそろホワイトデーのスイーツを持ってくるけれどいいかな」
「もちろん! 悠介君が作ってくれるスイーツが毎年楽しみなの」
「そう言ってくれてとても嬉しいよ。今年のスイーツももちろん手作りだから。じゃあ、スイーツと温かい紅茶を持ってくるから待っててね」
「はーい」
俺は部屋を出て1階の台所へと向かう。
冷蔵庫から今年のホワイトデースイーツであるチョコレートタルトを取り出す。
毎年、どんなスイーツを作ろうか悩むけれど、今年はタルトに挑戦してみた。また、栞へのプレゼントを目的に作っているので、チョコレートは甘めにしてある。
栞と僕の分を包丁で切り分ける。冷蔵庫で冷やしてあるので、ちょうどいい柔らかさになっているな。
温かい紅茶を2人分淹れて、僕は栞の待っている自分の部屋に戻る。そんな僕に栞は明るい笑みを見せてくれる。
「お待たせしました、栞」
「待ってました!」
「今年のホワイトデースイーツはチョコレートのタルトです」
「おおっ! タルトは初めてかも」
僕は栞の前にチョコレートタルトと温かい紅茶を置く。
すると、栞はより一層嬉しそうな表情になり、スマートフォンで写真を撮っている。
「美味しそうだね」
「ありがとう。じゃあ、さっそく食べようか、栞」
「そうだね。いただきます」
「いただきます」
栞と一緒にチョコレートタルトを食べる。うん、冷やして食べるとまた美味しいな。僕にとってはこのチョコレートは甘めだけれど、栞が気に入ってくれると嬉しい。緊張する。
「うん! 凄く美味しい!」
「良かった。栞の口に合うかどうか、何度か試しに作ってみたんだよ」
「そうだったんだ。私のためにありがとう。今年も受け取りました。チョコレートが甘めなのって、私の好みに合わせてくれたのかな」
「そうだね。普段もチョコレートは甘めのものを買ったりしているから、チョコレートらしさをしっかり残しながら、甘めにしてみたよ」
「なるほどね。その話を聞いたからかより甘く思えてきたよ」
そう言って、栞はタルトを食べ進めている。甘めにしたチョコレートを気に入ってくれて良かった。このくらいの甘さがいいんだな、覚えておこう。
「ねえ、悠介君。お返しのお返しをしたいんだけれど、いいかな?」
「うん、いいけれど」
僕がそう言うと、栞はゆっくりと僕に近づき口づけをしてきた。その瞬間に、チョコレートの匂いが口の中により甘く広がっていく。
唇が離れると、そこにはほんのりと頬を赤くしながら嬉しそうな笑みを浮かべる栞がいる。
「ふふっ、今のが一番甘かったかも」
「……僕もそう思うよ」
今度は僕の方から栞に口づけをする。やっぱり、口づけの甘さには敵わないな。
平成最後のホワイトデーも栞に喜んでもらえて本当に嬉しい。
来年は就活も始まって忙しくなるだろうけど、こうやってお返しをすることができれば何よりだ。そんなことを考えながら、甘いチョコレートタルトを食べるのであった。
特別編-The White day in 2019- おわり
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