4月1日(月)

特別編-New Era Name-




 今日から2019年度が始まる。今年度で大学3年生となるので、栞と僕の大学生活は折り返し地点となる。

 3年生については、ガイダンスは3日からなので、今日は栞の家に行ってゆっくりとしている。4月になったけれど、曇りの日を中心に寒い日が続く。自転車で栞の家に行ったけれどかなり寒く感じた。

 また、今日はエイプリールフールだけれど、今年は歴史的な一日になることは間違いないだろう。


「どんな元号になるのかな、悠介君」

「色々と考えすぎて、何になるのか分からなくなってきた」


 そう、今日は5月1日から始まる新しい元号が発表されるのだ。大学も休みで、バイトやサークルの予定も入ってないので、栞と一緒に元号の発表の瞬間をテレビで観ようということになった。

 栞と僕もそうだけれど、世間も3月に入ったくらいから平成という時代の総括をしたり、新元号がどんなものになるのか予想したりするように。これまでに栞と様々な予想を言い合ったけれど、果たしてどんな元号になるのか。

 元号の発表が11時半ということなので、僕は栞の家に11時過ぎにお邪魔し、彼女の部屋でコーヒーを飲みながらテレビを観ている。


「歴史的瞬間に立ち会っている感じがするよね」

「栞や僕にとっては、元号が変わるのはこれが初めてだもんね」


 平成生まれが故に。

 ただ、こうして明るい気持ちで新元号のことを考えることができるのは、生前譲位されるからなんだろうな。これから生きている間に改元を何度体験することになるのか。

 時刻は既に11時半を過ぎている。閣議が終了したとのことなので、あとは発表を待つのみだ。


「あっ、官房長官の人が入ってきたよ」

「入ってきたね。いよいよ発表だ」


 さあ、どんな元号が発表されるのか。何だか緊張してきたな。


『新しい元号は『令和れいわ』であります』


 そう言って、官房長官は『令和』と書かれた半紙が入れられた額を見せる。


「新しい元号は『令和』なんだ、栞」

「これは予想できなかったね。あと『和』を入れた元号になるのは意外だった」

「昭和で使っているからね。僕も明治以降の元号で使われた漢字は使わないと思っていたから意外だったな」


 平成生まれである僕でさえ昭和と被るイメージがあるので、昭和生まれの人にとってはより強く思うかもしれない。


「令和って何だかクールに聞こえるなぁ」

「れい、っていう読み方がそう思わせるのかも。『冷』っていう漢字を思い浮かべるからかな。個人的に平成が柔らかいイメージがあるから、令和は凄くきっちりとした感じがするよ」

「そうだね。新元号が発表されたから、もう平成が終わっちゃう感じがするけれど、あと1ヶ月あるんだよね」

「うん。ただ、新元号が発表されたからこそ、いよいよ新しい時代に向かうんだって感じもする」

「確かに、昨日までは平成が終わるって感覚があまりなかったもんね。20歳までが平成だったから、悠介君や私にとっては区切りがいいよね」

「子供時代が平成で、大人としてスタートする時代が令和か。偶然だけれど、いい区切りではあるか」


 令和という時代の中でどんなことが起こるのか。栞や僕としては、まずは就職活動と卒業論文だけれど。次の時代の中で栞との関係に変化は訪れるだろうか。令和の終わりにいい時代だったと言えるようになればいいな。


「悠介君。まずは残りの平成の時間をよろしくね。そして、その先の令和の時代も」

「うん、よろしくね、栞」


 栞が手を差し出してきたので、僕は彼女と固く握手を交わした。

 新元号が令和と決まったので、まずは残り1ヶ月となった平成という時間を噛みしめながら、大学生活を送っていくことにしよう。




特別編-New Era Name- おわり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る