1月1日(火・祝)-後編-
新年最初に目覚めると、そこには栞の可愛らしい寝顔があった。
栞が目を覚ました後、両親と一緒におせち料理とお雑煮を食べた。普段、朝ご飯はそこまで多く食べないけれど、おせち料理って意外とたくさん食べることができる。また、栞がいるからなのか、おせちを食べているときに、両親からお年玉をもらった。
少しの食休みをした後、当初の予定通り、僕は栞と一緒に近所の神社に初詣へ行くことに。そのときは、去年と同じように、以前クリスマスプレゼントで栞からもらったニットキャップを被って。栞も去年と同じく、僕が以前にクリスマスプレゼントとしてあげたマフラーを巻いてくれているので嬉しい。
晴れていることもあってか、神社に到着すると性別や世代を問わず初詣の参拝客が多くいた。去年は栞の自宅の近くの神社へ初詣に行ったけれど、あっちと引けを取らないくらいに多い。
「こっちの神社も多いんだね」
「鳴瀬にある神社の中では一番大きいからね。駅からも歩けるし。僕も中学を卒業するまでは、三が日の間に家族でこの神社に参拝するのがお決まりだったよ」
「そうだったんだね。さっそく並ぼうか」
「うん」
僕と栞は参拝者の列の最後尾に並ぶ。
「晴れていて良かったね」
「うん。風もほとんどないし、これなら並んでいられそうだ」
温かいのは陽差しだけじゃなくて、僕と腕を組んでくる栞もなんだけれど。これならいくらでも待っていられると思う。
参拝の長い列に並んでからおよそ25分。あっという間に僕と栞の番になった。
「はい、栞」
「ありがとう」
僕は栞に5円玉を渡した。栞と出会い、一緒にいられるこのご縁を大切にしましょうという意味で賽銭をするときは毎年5円と決めている。
僕と栞は賽銭箱に5円を入れて、二礼、二拍手、一礼。
最後の礼のとき、去年と変わらずに栞と一緒にいることができますようにとお願いした。今年で栞と出会って付き合い始めてから5年が経つので、例年よりも強く願った。栞と同じ願いだったら嬉しいな。……何か、去年も参拝したときに同じようなことを考えた気がする。
「ねえ、悠介君。どんなことをお願いした? 私は今年も悠介君と一緒に楽しく大学生活を送ることができますようにってお願いしたよ。今年は悠介君と付き合い始めてから5年だからよーくお願いした」
「僕も同じようなことをお願いしたよ」
「ふふっ、やっぱり」
栞は嬉しそうに僕の手をぎゅっと握ってきた。2019年の年末に、2018年と同じように一緒に過ごせて良かったねと言えるよう頑張りたい。
「ねえ、悠介君。今年もおみくじをやっていこうよ」
「そうだね。やろうか」
今年はどんな結果になるだろう。去年は確か中吉だったかな。できれば、去年以上の運勢だと嬉しい。
巫女服姿の若い女性はどこの神社でもいるんだな……と思いながらおみくじを引く。
「やった! 大吉! 悠介君はどうだった?」
「僕は小吉だったよ。栞は凄いね」
小吉と末吉ってどちらがいいのか分からないけれど、凶よりはいいだろうからよしとするか。
一番気になるのはもちろん恋愛だ。小吉の僕の恋愛はどうなのか。
『好きな人の心をよく考えよ』
と書かれていた。栞がどんな思いを抱いているのかしっかりと考えなさいってことか。出会ってから5年という節目には有り難い言葉だ。
あと、恋愛の他に気になるのは……学生だから学問かな。
『努力を怠らないように。そうすれば結果が出る』
油断して勉強を怠っていると、単位を落としてしまうかもしれないな。今期も特に難しいと感じる科目はないけれど、油断をしてはいけないな。
おみくじの結果をスマートフォンで撮影する。2019年の中で、何か迷いが生じたときはこのおみくじの内容を見ることにしよう。
僕らはおみくじをしっかりと結んで、2019年の初詣は終わった。
「今年もこれで初詣が終わりか」
「終わっちゃったね。これで家に帰るのはちょっとつまらないから……そうだ、あそこの屋台で甘酒が売っているみたいだから今年も飲もうよ。甘酒を楽しみにしていたんだ」
「去年の初詣で美味しそうに飲んでいたよね。じゃあ、昨日の約束をここで果たしてもらおうかな」
「うん、分かった!」
僕は栞と一緒に甘酒の屋台へと行き、栞に甘酒を奢ってもらう。昨日、お風呂に入っているときに、甘酒の屋台があったら甘酒を奢ってもらおうと決めていた。
近くにあるベンチに座って飲むことに。
去年の初詣でも甘酒は飲んだけれど、そのときは甘すぎて、半分くらい栞にあげちゃったんだよな。ただ、去年はお酒を中心に甘い飲み物を飲むことが多かったから、今年は一杯飲むことができるかな。あの神社の屋台の甘酒とは違うだろうし。そんなことを考えながら一口飲む。
「うん、甘酒という名前通り甘い」
「ふふっ、そうだね、悠介君。でも、この独特の甘さがたまらないよね」
「確かに、この甘さは甘酒特有だね」
初詣のときぐらいしか飲まないので、甘酒を飲むと新年を迎えたんだと思えるようになってきた。
「悠介君、今年はどう? 飲みきれなさそうなら私が飲むけれど」
「今のところは大丈夫。20歳になってから、定期的に栞と甘いお酒を呑んだからかな。それとも、栞の近くの神社で売っていた甘酒とは違うからか、これだったら飲みきれそうな気がする」
「そっか。……うん、確かに去年飲んだ甘酒よりも甘さが控え目かもしれない」
「むしろ、去年飲んだ甘酒がかなり甘かった気がするよ」
「そうかなぁ」
さすがは大の甘党の栞。
そういえば、去年……僕の分の甘酒もゴクゴク飲む栞のことを見て、20歳になったら栞は甘いお酒をたくさん呑みそうだって思ったっけ。量はそこまで多くはないけれど、カクテルやサワーを気に入って、定期的に呑むようになったな。
「どうしたの、悠介君。私のことを見ながらクスクスと笑って」
「1年前の僕の予想が当たったなって」
「えぇ、どんなことを考えたの?」
「栞は20歳になったら甘いお酒をたくさん呑みそうだって。ほら、去年は僕の分の甘酒も美味しそうに飲んだからさ」
「あぁ、なるほどね。確かに、カクテルとか、サワーとか甘い味のお酒を呑むようになったね。すぐに酔っちゃうから、そこまで多くは呑めないけれど。……うん、1年前の悠介君に拍手を贈りたいね」
楽しげな笑みを浮かべながら、栞はベンチの上に紙コップを置いてパチパチと手を叩いている。1年前の僕に今の栞の姿を見せてあげたいよ。
栞の可愛らしい姿を見ることができたからか、今年は甘酒を一杯飲むことができた。
「おっ、今年は全部飲んだね。今の悠介君にも拍手!」
再び栞は拍手をする。それもあってか、飲んでやったぞという感じに。
栞の拍手のおかげで今年もいい1年になりそうな気がしてきた。ちなみに、栞は僕が飲み終わる大分前に飲み終わっていた。
「神様にお願いしたけれど、2019年も悠介君と一緒に大学生活を送ることができると嬉しいな。4月からは3年生になるし、そろそろ忙しくなってくる時期だけれど」
栞はそう言うと、手を重ねてきて指を絡ませてきた。
「僕も今年もできるだけ一緒に栞と大学生活を送りたい。ゼミとか進路のこととかで忙しくなりそうだからこそ、今みたいに一緒にいられる時間を大切にしたいな」
「……そうだね」
栞は嬉しそうな笑みを見せると、僕に口づけをしてきた。周りに多くの人がいるから恥ずかしいけれど、栞と口づけすることは嬉しい。
「今年もよろしくお願いします、悠介君」
「こちらこそ、今年もよろしくお願いします、栞」
春には、出会って付き合い始めてから5周年となる2019年はどんな1年になるんだろう。遅くても5月からは新しい元号になる年でもあるし。
大学生活も後半に入り、将来のことを具体的に考え始めるようになるけれど、栞と一緒に楽しく生活できる未来を見つけることができればいいなと思う。
特別編-Year End and New Year of 2018~2019- おわり
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